「しもべのように…」 作家が見た首相公邸の夫人付職員
プレミアムフライデーのイベントに登場した安倍晋三首相の妻昭恵氏=2月24日、東京都中央区
学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、安倍晋三首相の妻昭恵氏への陳情に対応した首相夫人付の政府職員に注目が集まっている。昭恵氏が「秘書」と呼ぶ夫人付職員らとの関係は――。作家の石井妙子氏が昭恵氏への取材のため、首相公邸を訪ねた時の様子を語った。
首相公邸は1929年完成の西洋風の建物で、かつての首相官邸。いま安倍首相が執務する官邸の隣にあり、昭恵氏は来客対応に使う。今年1月5日、石井氏は夫人付職員の女性を通して調整した上で訪れた。脇の入り口から入ると、その彼女が出迎えた。
国有地問題で話題の女性とは別の人で、30代ぐらい。服装は地味で、事務職員のように見えた。差し出された名刺に「内閣総理大臣付」と肩書があり、左下には「内閣総理大臣官邸」の住所と連絡先。携帯電話の番号とGメールのアドレスも記されていた。
アフリカ問題のNPO関係者だという先客と入れ替わりで、エレベーターで上の階へ案内され、部屋に入った。6~7人は囲めそうな楕円(だえん)形のテーブルの奥の席で、昭恵氏が座ったまま迎えた。来客に慣れた様子で「謁見(えっけん)」の趣だった。
雑誌「文芸春秋」のインタビューで首相夫人としての思いを聞いた1時間。活発な活動に批判もあるがと問うと、「昔風のファーストレディーではないですが、主人にやめろと言われたことはない。目指すところは一緒で、日本のためにやっています」。自信にあふれた話しぶりだった。
先ほどの夫人付職員の女性もいたが、質問には口を挟まず、部屋の隅の机でメモを取り続けた。時間がくると、彼女が「そろそろ」と声をかけてきた。「並んでください」とスマホを構え、記念撮影。土産に渡された紙包みには、昭恵氏の似顔絵があるメモ帳とボールペンが入っていた。
石井氏は「来客対応が一連の流れになっていて、あうんの呼吸だった。彼女はしもべのように動いていました」と振り返る。
公邸を出る際に彼女は玄関まで付き添った。石井氏が「秘書さんは何人いるんですか」と尋ねると、「5人です。外務省と経産省から来ています」。後で電話で確認すると、全員女性とのことだった。(藤田直央)
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