「共謀罪」法案、36の県市町村議会が意見書
人権を脅かすおそれはないのか――。衆議院で審議入りした「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案をめぐり、各地で慎重な議論を求める訴えが広がっている。地方議会では意見書を出す動きがあり、政権与党の議員からもくぎを刺す声が上がる。
衆議院によると、6日現在、三重、宮崎の両県議会のほか、34市町村議会から反対または慎重な審議を求める意見書が届いた。
宮崎県議会(定数39)は3月22日、「幅広い観点から慎重に検討することを強く要望する」とする意見書を全会一致で可決した。テロ対策のため国際組織犯罪防止条約の締結は重要としつつ、政府が必要とする「テロ等準備罪」の新設には「様々な懸念があると指摘されている」とした。
当初、民進・社民系会派が示した案には「捜査権限が濫用(らんよう)される恐れがある」といった厳しい文言もあった。調整にかかわった中野広明議員(自民)は「受け入れられないものは削除した。テロ対策は極めて重要だが、人権を侵さない範囲で最大限やるべきだ」。
長野県では各地の市民団体の働きかけなどで全国最多の13市町村議会が反対や慎重な審議を求める意見書を出した。社民系の県護憲連合の布目裕喜雄・事務局長は「『同じ歴史を繰り返していいんですか』と呼びかけた」。ほかにも議決の動きがあり集計中という。
同県では1933年、多数の教員を含む約600人が治安維持法違反容疑で検挙された「二・四事件」が起きた。同法との類似点が指摘される「共謀罪」への反発が強まった背景の一つに、この事件があるとの見方もある。布目氏は「政府は論点を巧みにすり替えている。意見書の可決は、議会の良心の表れだ」。
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