就職好転、続く文系人気 大学入試、大規模私大は狭き門
大学入試センター試験が14、15日に行われる。今年の国公私立を合わせた受験生の志望動向は昨年と同様、理系に比べて文系学部の人気が高い「文高理低」。だが、国立大をみると文系の定員が縮小し、理系が拡大する「文縮理拡」だ。大規模私大では、入学者が定員を大きく上回らないよう「定員管理」が厳しくなり、難易度が上がるとの見方がある。
センター試験志願者の4分の3近い約42万人が受けた駿台予備学校とベネッセコーポレーションの模擬試験(昨年9月時点)の分析によると、文系の志望者は国公立・私立とも法学系や経済・経営・商学系を中心におおむね前年を上回った。国公立の第1志望の合計人数は、前年度を100とすると全体で99、法学系107、経済・経営・商学系106に対し、理学系96、医学系と農・水産系95だった。
理系で志望者が多かったのは、工学部系の電気・情報分野、2020年東京五輪・パラリンピックに向けた公共事業で注目を集める土木・建築分野など一部だったという。河合塾が昨年10月に行った模擬試験でも同じ傾向だった。
「文高理低」の要因とされるのが就職状況の好転だ。大学生の就職率はリーマン・ショック(2008年)後の12年から5年連続で改善。文系の人気が昨年ごろから回復してきたという。理系は就職の低迷期は好まれるが、文系の方が幅広く就職先を選べるイメージがあるためとみられる。
科目の改編も関係がありそうだ。高校理科は今の教育課程で学習内容が増え、センター試験では15年から、主に理系進学者向けの理科科目の出題範囲が広がった。河合塾教育情報部の富沢弘和部長は「就職環境が改善されて文系に進みやすくなったうえ、センター試験の理科の負担が増し、理系が敬遠されがちになった」とみる。駿台教育研究所進学情報センターの石原賢一センター長も「経済状況が大きく悪化しない限り、文系人気は続くだろう」と話す。
■国立の文系、2年前から1・4ポイント減
河合塾が17年度の国立大の入学定員を「文」「理」「その他」の3系統に分けたところ、文系(人文・社会科学、教育)が3万6945人で全体の38・6%と、2年前から1・4ポイント減。これに対し理系(理、工、農、医療)は5万5184人、57・7%で、0・9ポイント増だった。それ以外の生活科学、芸術、体育などが3474人となっている。
典型例が茨城大だ。17年度の人文学部の定員を「人文社会科学部」に改組するのに伴い35人減。教育学部も教員免許取得を卒業要件としない課程を廃止し、75人減らした。一方、学科を改組した農学部は45人、工学部は40人増。太田寛行副学長は「農業県、工業県である茨城の特徴を生かすには農学、工学分野の強化が必要だ。人文系も地域経営のリーダー育成に向け、法律なども幅広く学べるように改組した」と話す。一方、「地域課題の解決には、自然科学、人文社会科学の協力が不可欠だ」として、農学部の一部は文系の科目選択で受けられるよう門戸を開いた。
文部科学省は15年6月、国立大に対し、教員養成系と人文社会科学系の学部・大学院について「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組む」よう通知した。神戸大も文学部の入学定員を15人減。文系分野が中心の国際文化、発達科学の2学部を国際人間科学部に改組して50人減らした。逆に理系では工学部で25人、理学部で13人、農学部で10人それぞれ増やした。
■大規模私大の合格者数、抑え気味に
特に大規模私大で厳しくなる定員管理の影響も注目される。文科省は、私大の入学者が定員を一定以上超えた場合、大規模大ほど経常費の補助金を渡す条件を厳しくする方針で、18年度まで段階的に実行する。大・中規模大は関東、関西、中部の3大都市圏に多いため、学生を地方に分散させるねらいがある。
代々木ゼミナール教育総合研究所の坂口幸世(ゆきとし)主幹研究員は「全体的には大規模私大の合格者数は抑え気味になる」と推測。「文系志向の高まりで、私立も国立も文系は合格が難しくなる」とみる。駿台教育研究所進学情報センターの石原賢一センター長は「地方や定員割れの私大では定員厳格化の影響は少ない。競争で難易度が増す大学と、そうでない大学の二極化が顕著になると思われる」とする。(片山健志)
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