オバマ氏「イエス・ウィー・ディド」 大統領退任演説

写真・図版10日夜、シカゴで退任演説をするオバマ米大統領=AP

20日に2期8年の任期を終えて退任するオバマ米大統領は10日夜(日本時間11日午前)、シカゴで退任演説を行った。医療保険制度改革(オバマケア)などの実績を強調し、「(政権を)始動させた時より、米国は改善し、より強くなった」と胸を張った。一方、トランプ次期大統領の名指しは避けながらも、移民など多様性が米国の原動力だと力説した。

大統領の退任演説はホワイトハウスで行うのが通例だが、オバマ氏は弁護士活動や貧困層救済の市民運動を始めた、自身の政治の原点であるシカゴを退任の演説会場に選んだ。

演説では「庶民が参加し、共に要求した時に初めて『チェンジ』が起きると学んだ」と強調。「米国の若さ、活力、多様性、寛容さ、危機に対する無限の能力と改革が、未来も我々にある」と訴えた。

トランプ氏が不法移民の強制退去やイスラム教徒の入国禁止など排他主義的主張を繰り返していることを念頭に「米国は(移民など)新参者によって弱まることはなかった。彼らは米国の教義を受け入れ、それを強化している」と多様性が米国の強みだと強調した。また、「我々が恐怖に屈した時、民主主義が崩壊する」と語り、「イスラム国」(IS)など過激派組織と対抗するためにも「私はイスラム教米国人への差別を拒絶した」と述べた。

一方、8年の政権の実績を振り返り、オバマケアにより、「2千万人の市民が医療保険の権利を得た」と主張。経済面で金融危機から復活し、失業率も大きく改善したとし、「今日、経済は再び成長している。失業率は10年ぶりの低い水準に近い」と景気の回復を強調した。ただ、「上位1%の人がより多くの富や所得を得る一方、あまりに多くの家族が置き去りになっている」と格差是正は道半ばとの認識を示した。

外交では、キューバとの国交回復に加え、「1発も発砲することなく、イランの核兵器開発を停止させた」と語り、軍事的手段ではなく、外交努力によって問題解決に道筋をつけたと胸を張った。目頭を熱くし、オバマ氏の相談役でもあったミシェル夫人を「ホワイトハウスをすべての人のものにした」とファーストレディーの役割を評価する場面もあった。

演説の締めくくりには自身の選挙スローガンだった「Yes We Can」に加え、8年を振り返って「Yes We Did(成し遂げた)」と語り、未来に向けてもう一度「Yes We Can」と訴えた。(ワシントン=佐藤武嗣、五十嵐大介

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