豊洲市場の地下水、突然の悪化なぜ 専門家「経験ない」
築地市場の移転が予定されている豊洲市場。左手前が水産卸売場棟、右手前が青果棟=東京都江東区、朝日新聞社ヘリから
環境基準の最大79倍にのぼるベンゼン、シアン、ヒ素――。東京都の豊洲市場の地下水検査の最終結果で、これまでにない有害物質の数値が明らかになった。「あまりにもショッキング」「これでは移転はできない」。専門家は戸惑い、業者は憤りをあらわにした。築地市場からの移転はどうなるのか。移転を凍結している小池百合子知事は「想定を超える数値が出た」と述べ、より慎重に判断する考えを示した。
14日午後、築地市場(中央区)の講堂で東京都の専門家会議が開かれた。
硬い表情の都の担当者が、豊洲市場予定地の地下水の検査結果を説明した。
「(今回、有害物質の数値が)急激に上がっているところが、多々あります」
「理由はわかりづらいところであります」
市場関係者らは、静かに資料に目を落とした。
地下水検査は2014年に始まった。今回が9回目の発表だ。過去1~7回は全201カ所の観測地点で、ベンゼンやヒ素などが環境基準値以下だった。
昨年9月に公表された8回目で、初めて基準の1・1~1・9倍のベンゼンとヒ素が3カ所で検出された。それでも、平田健正・座長(放送大学和歌山学習センター所長)は「健康に影響するものではない」との見解を示していた。
それが一転、基準を超えた場所が72地点に拡大し、ベンゼンは最大79倍、本来検出されてはいけないシアンは初めて検出された。
突然の「変化」に、委員たちは戸惑いを隠さなかった。
平田座長は「あまりにも今までと傾向が違う。こういう経験は今までにない。どう評価をすればいいか分からない」と述べた。駒井武・東北大学大学院教授も「あまりにもショッキングな状況」と語った。
ASAHI.COM