「いつになったら動く」鳥取の大雪、立ち往生15時間超
除雪作業が終わり、通行止めが解除された国道179号では徐行運転が続いた(24日午前9時半過ぎ、鳥取県三朝町、谷口雅敏さん提供)
23日夜から24日朝にかけて降った大雪で、鳥取県内を中心に多数の車が立ち往生した。十数時間にわたってほとんど動けず、ガソリンが底をつきかける車も。発熱した男児や体調不良を訴えた70代男性らが病院へ運ばれた。強い寒気がピークを迎えるなか、ドライバーや沿線の住民らは不安な様子で復旧を待った。
雪が降り続ける24日朝、中国山地の山あいを通る鳥取県智頭町の国道373号には、トラックや乗用車がずらりと並んだ。「いったいどうなっているのか分からない。いつになったら動き出すのか」。乗用車の男性(64)=鳥取市=は朝日新聞の電話取材に対し、いら立った様子で車内から伝えてきた。
男性は妻と2人で神戸市から鳥取市の自宅に帰る途中だった。鳥取自動車道が雪で通行止めになり、23日午後6時ごろに智頭町内でおりて国道に入ったが、動けなくなった。車が少し進んだと思ったら、すぐに止まる状況は夜になっても変わらず、暗やみの中で待ち続けた。
「雪は降るし、誘導もないし。ガソリンもなくなってきて……」。男性は燃料切れが心配になり、1時間ごとにエンジンを切り、車の屋根に積もった雪を傘で払った。朝になると、地元の人がおにぎりや温かいお茶を持ってきてくれた。ガソリンやお菓子を買ってきた人もいたという。
気持ちは少し落ち着いたが、24日午前10時前の時点で、すでに15時間以上立ち往生したまま。「とにかく動くのを待つしかない」。男性は語った。
智頭町が23日夜に開設した二つの避難所には車内にいた人が集まり、町は備蓄用のカップ麺などを提供した。24日午前9時の時点で50人ほどが身を寄せ、毛布にくるまって休んでいた。
国道373号沿いに住む女性(26)によると、道路の上には雪が1メートルほど積もり、観光バスも立ち往生。地元の住民で炊き出しをしているという。「こんなに雪が降ったのは生まれて初めて。寒いので、車内にいる人の体力が心配です」
米子自動車道の蒜山(ひるぜん)高原サービスエリア(SA、岡山県真庭市)。上り線の軽食コーナーは普段は午後10時に閉じるが、23~24日は立ち往生した人々がたどり着いた時に備え、急きょ夜通しで営業した。
SAの従業員によると、24日午前6時すぎ、道路上の除雪が進み、大型トラック1台と乗用車1台がSAに到着。乗用車から降りてきた女性は疲れた様子で「開いてて、よかった。ありがとうございます」と言ってお菓子や飲み物を買い、温かいそばを食べたという。
同SA近くで農業を営む30代男性は「ここ数年で一番の積雪。一刻も早く雪が落ち着いてくれないと、何もできない」。自宅周辺の積雪は24日朝に130センチ前後になっているといい、男性は「このままでは身動きができない。早くやんでほしい」と語った。
西日本高速道路(NEXCO西日本)中国支社は米子道で立ち往生した車のドライバーらにおにぎりやいなりずし、お茶のセット計300個を手渡した。米子道の蒜山インターチェンジ(真庭市)から1キロほどのところにある「道の駅風の家」では、敷地内に約2メートルの雪が積もっている場所もあるという。従業員は取材に「今日もまだ雪が降っている。雪かきもきりがない」と話していた。
被害や交通機関への影響は各地にも広がった。岡山地方気象台によると、岡山県真庭市蒜山上長田で最大積雪量114センチ(24日午前6時)を記録。真庭消防署によると、真庭市内では23日午後3時半ごろ、屋根で雪下ろし中の男性(74)が転落して重傷を負った。また、女性(64)が自宅前の道路で雪かき中に転倒し、手首を骨折したという。
徳島県藍住町では24日午前5時ごろ、会社員の男性(61)が運転する軽乗用車が吉野川の堤防上の県道から土手下へ転落。胸を骨折して亡くなった。県警板野署によると、当時は路面が凍結しており、スリップしたとみられるという。
雪の影響で東海道新幹線は始発から名古屋―新大阪間の上下線で速度を落として運転。午前10時の時点で下りが最大20分遅れ、山陽新幹線も最大20分の遅れが出た。特急も新大阪―福知山、京都―福知山など20本以上が運転を取りやめた。
■過去に起きた雪による主な立ち往生
2010年2月 新潟市の国道から広域農道に迂回(うかい)した車100台以上が立ち往生
10年12月~11年1月 鳥取県の米子市から琴浦町の国道9号の約25キロで車約1千台が立ち往生。混乱は40時間以上続いた
1月 北陸道の福井―木之本(滋賀)、長浜(滋賀)―今庄(福井)などが通行止めに。一時約800台の車が動けなくなった
12年2月 青森県の国道279号で数百台が立ち往生。車内の計329人が小学校など21カ所に避難
13年3月 北海道で500台以上の車が立ち往生。中標津町では雪に埋もれた車の中で母子4人が一酸化炭素中毒で死亡。湧別町では父娘が乗った車が吹雪で動けなくなり、車の近くで父親が娘を抱いたまま凍死
14年2月 東名高速の神奈川県内の下り線と静岡県内の上り線で、いずれも最大40キロ、20時間以上立ち往生
16年1月 愛媛県八幡浜市の国道378号で100台以上の車が立ち往生
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