害獣が新鮮・美味なジビエに? 「解体車」の可能性探る

写真・図版ジビエ料理「奥三河高原ジビエの森より 鹿ロース肉のポワレ リンゴベリージャムのアクセント」(リストランテ マキャベリ新宿店提供)

田畑などを荒らすシカやイノシシの駆除、活用が各地で課題となるなか、捕らえた獣をその場で解体し、新鮮な野生動物肉「ジビエ」にできる「ジビエ解体車」が注目されている。実証実験に同行すると、ジビエの流通量をもっと増やせる可能性がみえてきた。

長野県境にある愛知県設楽(したら)町。零下10度近くに冷え込んだ1月下旬の朝、解体処理施設「奥三河高原ジビエの森」のスタッフ鈴木秀夫さん(65)のスマホが鳴った。「シカがかかった」。猟師からだ。

鈴木さんはジビエ解体車のハンドルを握り、約40キロ離れた同県豊川市へ。標高約800メートルの山のふもとで地元猟師の大竹清次さん(84)と合流し、獲物がかかったわなに向かう。

雑木林で、立派な角が生えたオスジカが人の気配を察して暴れ回った。右前脚にくくりわなが巻き付いている。棒で頭をたたき、倒れたシカの胸を鈴木さんが素早くナイフで刺した。

シカをそばの解体車まで運び、ウィンチで持ち上げると重さ52キロ。荷台の解体室につるし、鈴木さんが中に入って扉を閉める。内臓を取り出して、皮をはぐ。約20分後、シカは枝肉に様変わりし、保冷室へ移された。「冷蔵できるので、今まで無理だった遠くの地域からでも傷めずに運べるようになった。命あるものなので大事にしないと」

ジビエの森は2015年4月からシカとイノシシを解体処理し、ジビエとして販売している。処理は食品衛生法に基づく許可施設で行う必要がある。鮮度を考えて生きた状態で猟師から買い取り、すぐに設楽町の施設に戻って解体してきた。季節によるが車で1時間ほどの範囲で捕れたものだけが対象で、16年4~12月で214頭を処理した。今回、解体車で一部の処理ができる許可を取り、1時間30分離れた現場からも運べるようになった。

ASAHI.COM

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