伊勢エビ、ざわざわ ウツボとエサ奪い合い 鳥羽水族館

写真・図版仲良さそうに寄り添う伊勢エビとトラウツボ=竹谷俊之撮影

360度動画「いきもの目線」

水槽内の岩壁に、びっしりと張り付く巨大な伊勢エビ。隙間からはウツボたちが遠慮がちに顔をのぞかせる。三重県鳥羽市鳥羽水族館では、全長約30センチの伊勢エビが展示されている。その数、約150匹。水槽の前で足を止める来園者たちは「おいしそう」「全部でいくらかな」「気持ち悪い」。こんな伊勢エビがウジャウジャいる水槽に360度カメラを仕掛けた。

伊勢エビは水の中ではくすんだ色に見え、周りの岩肌と同化したようだ。この、伊勢エビだらけの壁を見上げるように、砂地にカメラを設置した。

伊勢エビは時折、砂地をゆっくり歩いてカメラに近づくものの、「異物」には興味が無い様子。見かねた担当飼育員の玉置史人さん(55)がエサのアジを入れると、途端に「壁」がざわざわと動き出した。さっきまでの静けさは一変。ウツボとエサを奪い合ったり、カメラの上に乗りかかったり……。自然の海では、伊勢エビの天敵はタコで、そのタコの天敵はウツボだという。伊勢エビにとっては強面(こわもて)のウツボは守護神のような存在だ。

名前の由来は「伊勢商人が志摩地方で捕れたエビを京都に運んで商売した」「伊勢でよく捕れる」……など諸説ある。生息地域は茨城県から九州の太平洋側で、近年は岩手県の三陸沖でも捕獲されたという。

伊勢エビは卵から孵化(ふか)した後の約1年間、フィロソーマ幼生と呼ばれるプランクトンとして海を漂う。伊勢エビの人工飼育の研究をしている三重県水産研究所によると、一度に数十万個の卵を産むが、成体になるのはわずか1~2匹。フィロソーマ幼生を稚エビまで育てた後の生存率は向上したが、安定した大量飼育ができるまでには至っていないという。(竹谷俊之)

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