夢描くことを親に許されず、私は… 山口智子さん

写真・図版女優の山口智子さん=早坂元興撮影

3月8日は国際女性デー。俳優の山口智子さんは「自分で選んだという自信が、人生を好転させていく」と語ります。

人生は、自分で選びとるものだと思います。人のせいにするのではなく、イエスかノーか、自分で選択している限り後悔はない。自分で選んだという自信が、人生を好転させていくと信じます。

大多数の声だけが、正解ではないはず。人と同じである必要はまったくない。自分の心の声に耳を傾け、自分ならではの個性を育んで、世の中の役に立つことだと思います。

今日、明日の結果だけではなくて、たっぷりと時間をかけて、色々な経験や感動を積み重ねていくことこそ、人生のだいご味です。まだ私も人生の旅の半ばですが、もっとたくさん学んで、自分は世界でいちばん幸せだと胸をはって誇れるような、自分ならではの道を築いていきたいです。

でも、最初から自分のやりたいことが、明確に見えている人は少ない。私もずっと、親から強いられた道に従ってきました。自分の夢を描くことを許されなかった、子ども時代の苦しさがあったからこそ、「選びとる人生」の素晴らしさを、今実感できるのかもしれません。

小さいころからずっと、家業の旅館を継いでおかみになるのだと、親に言われて育ちました。

学生時代、週末はいつも旅館業の手伝いでした。親は現場での実践修業が大切だから、大学に進学する必要はないという考えでした。私は家族の期待に応えたい一方、本当にそれが自分の望む道なのか、心を決めきれない葛藤がありました。心のどこかで、自分の人生を見つけるチャンスを、強く求めていたのだと思います。

受験が許されなかったので、受験せずに進学できる推薦入学という方法を見つけ、「2年たったら帰ってくるから」と親を説き伏せ、東京の短大に入学しました。期限付きの自由であることは、もちろん覚悟していました。

女子学生寮での生活が始まりました。門限も厳しい寮でしたがその中で、何か新しいことを学びたくて、声をかけていただいたモデルの仕事を始め、色々なオーディションを受け続けました。

仕事の撮影がのびると門限厳守も徐々に難しくなり、東京郊外の親戚の家に移り、都心へ通いながら勉強と仕事を続けました。そして23歳の時、たまたまモデル事務所に募集がきた、NHKの連続テレビドラマ小説のヒロイン役のオーディションを受け、幸運にも合格することができました。

まったく予想もしていなかった展開の中で、俳優の仕事が本格的に始まっても、「若い時にしかできない仕事だから」と親を説得し続けました。しかし、仕事に全身全霊をかけているうちに、いつのまにか親も私の選んだ道を認めてくれるようになりました。

目の前にある仕事が自分にあっているかなんて、きっと誰にもわかりません。でも、何かを変えたいと思ったら、とにかく全力を注いで力を尽くして、これだと思える答えを、自分で導いていくしかないのだと思います。

悩んでいる暇があったら、イエスかノーか、自分の心に聞いて、まず選択してみることです。その選択の連続の先に、自分の未来が続いてゆく。自分で選ぶ人生に誇りを持って進めば、絶対に大丈夫! 自分の道を作っていくのは、自分しかいないのですから。

この7年ほどは、世界の音楽文化を追う映像ライブラリー制作がライフワークです。人間の共通言語である音楽を通し、さまざまな土地の個性的な文化を学ぶことは、俳優としての人間修業でもあると思います。一生をかけて、学び続けていきたいです。(聞き手・錦光山雅子)

1964年生まれ。栃木県出身。モデルを経て1988年、NHKテレビ連続ドラマ小説「純ちゃんの応援歌」で俳優デビュー。「ロングバケーション」などのドラマ出演のほか、世界の音楽文化を追う映像シリーズ「LISTEN.」(http://www.the-listen-project.com別ウインドウで開きます)をプロデュース。3月、スペシャルドラマ「LEADERS(リーダーズ)2」(TBS系列)に出演。

■自分らしく生きるって? 投稿募集

女性に生まれたことを喜び、みんなで祝福したい。3月8日の国際女性デーに向けて、朝日新聞は新企画「Dear Girls」を始めました。紙面や朝日新聞デジタルで展開していきます。

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