厳戒態勢の空港へなぜ戻った? 金正男氏殺害容疑の女
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キムジョンナム)氏がマレーシアの空港で毒殺された事件で、実行犯とされるベトナム国籍のドアン・ティ・フォン容疑者(28)が事件2日後に空港で逮捕された際、パスポートを所持していなかったことが分かった。捜査関係者が明らかにした。逃亡の準備もなく、警戒が続く空港になぜ戻ってきたのか。捜査当局は、フォン容疑者の不可解にも見える行動に真相解明の手がかりがあるとみて、詳しく調べている。
フォン容疑者は、クアラルンプール国際空港で13日午前9時ごろ、出発ホールに現れた正男氏の背後から両手を伸ばし、猛毒の神経剤「VX」を顔に塗りつけて死亡させたとされる。警察が監視カメラを分析したところ、フォン容疑者は事件直後に空港のトイレで手を洗い、タクシー乗り場で車を拾って立ち去っていた。近くのホテルに戻ると、1時間ほどでチェックアウト。そばの別のホテルに移ったという。監視カメラに気づいて顔を隠したり、マスクで顔を覆ったりと、周囲を警戒する行動が目撃されている。
ところが15日朝には、警戒態勢が敷かれた空港に戻り、逮捕された。犯行時とは違う服装だったものの、警察は監視カメラの映像をもとに、顔立ちや体形などを共有し、巡回中だった。拘束された直後のフォン容疑者は、取り乱すこともなく、捜査員らにほほえみかけていたという。着替えやパスポートは持っておらず、荷物の多くはホテルの部屋に置かれたままだった。
ASAHI.COM