侍J打って打って打ちまくって 神スイング稲村亜美さん

写真・図版侍ジャパンに「打ちまくって」とエールをおくる稲村亜美さん=佐藤正人撮影

WBCを語ろう

野球の世界一を決めるワールド・ベースボール・クラシックWBC)。過去2度の優勝を誇る日本代表「侍ジャパン(侍J)」は3月7日に初戦を迎えます。野球女子として人気のタレント稲村亜美さん(21)は「打って打って打ちまくって世界一を」と期待を寄せます。

WBCで印象に残っているのは2009年大会の決勝です。延長を制しての優勝。最後にダルビッシュさんが、三振を奪ってマウンドでほえたとき、わぁーっと感動しました。しびれましたね。

当時、中学生だった私はシニアチームに所属するバリバリの野球少女で、真っ黒に日焼けして白球を追っていました。そのころは、そんなにプロ野球は見ていませんでしたが、WBCは応援しました。ピッチャーでイケメンという理由でダルビッシュさんが好きでした。いま振り返ると浅はかというか幼いというか、懐かしいです。

兄の影響で小学校、中学校の9年間、野球をしました。練習では、とにかく走らされた思い出しかありません。練習前に1時間ランニングとダッシュ走、試合に負ければ走れ、勝ったときでも走れと言われ……。好きだった練習は外野フライの捕球です。理由は待っている間に休めるから。それだけ練習はきつかったです。

■人間関係のすべてを野球から学んだ

メンタルは鍛えられました。最初は女子が3人いましたが、最後まで残ったのはわたし1人。思春期ということもあり、チームメートの男子とは心を許して何でも話せるという関係ではありませんでしたし、練習に行くのが嫌だなと思うこともありました。でも、一度やり始めたことを途中でやめたくないという気持ちが勝ったので、やめませんでした。それに、行くまでが嫌だっただけで、グラウンドに行けばなんだかんだで楽しかったんです。

野球を続けたことには感謝しかないです。あいさつや言葉遣い、礼儀など、人間関係に関わるすべてを野球から学びました。性格も明るくなったし、自分に自信を持てるようにもなりました。いまも緊張する場面で、野球のことを考えると、心が落ち着きます。だから、厳しい練習を続けている野球少年・野球少女には、いま乗り越えればたくさん得るものがあるよ、と伝えたいです。

■勝利の女神になりたい

おととし、ネット動画のCMにスーツ姿で野球をするOL風の役で出演したのがきっかけで、野球関係の仕事が増えました。これまで20回ほど、始球式に呼んでいただきました。

始球式をやらせていただいた試合は、よほどのことがない限り、ゲームセットまで観戦します。球場の雰囲気が大好きですし、思い切り応援したいからです。勝利の女神じゃないですが、稲村が始球式をした試合のホームチームは勝つというジンクスを作りたいな、と思いながら応援しています。今のところ勝率5割くらいですけど。

うれしいことにプロ野球選手とお話しする機会があります。目標は110キロの直球を投げることなのですが、いま最速で105キロです。この前、ロッテの唐川(侑己)投手から速い球を投げるコツとして「キャッチャーをぶち抜くイメージで投げてみて」とアドバイスをもらいました。そんな風に考えたことはありませんでした。おもしろいですよね。プロ野球選手は、ものすごい技術を持っていますけど、そこに至るまで、考えもつかない工夫や努力をしているんだな、と思いました。

■同世代の鈴木誠也選手に期待

そんなプロ野球選手からさらに選ばれた選手が集うのが侍J。わくわくしないわけがありません。もうわくわくしかないです。

世界の野球に比べて、体格やパワーで劣る日本野球は、小技や機動力をいかし、堅実な野球で巧みに得点して勝つイメージがありますよね。もちろん、それもいいんですけど、わたしはあえて打ち勝つ野球に期待したいです。打って打って打ちまくってほしい。

だって、打ちまくる野球の方が見ていて楽しいじゃないですか。普段は野球を見ない人でも、WBCだから見てみようという人は多いと思います。そういう人の心つかむような打ちまくる侍Jに期待しています。

期待する選手をしいてあげるとすれば? 同年代の鈴木誠也選手(広島)です。若さを出して思いっきりプレーして欲しいですね。(聞き手・佐々木洋輔)

いなむら・あみ 1996年生まれ。東京都出身。右投げ右打ち。「神スイング」と話題になったネット動画CMは2015年3月の公開から1カ月で約700万回再生された。夢は始球式「セ・パ12球団制覇」。現在7球団を達成。21歳。

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