遺品や原画に「妖怪が出る」書斎も 「ゲゲゲの人生展」
「ゲゲゲの鬼太郎」など代表作の原画が多数展示されている=8日午後8時46分、東京都中央区の松屋銀座、竹花徹朗撮影
「ゲゲゲの鬼太郎」「悪魔くん」などで知られる漫画家、水木しげるさん(1922~2015)の遺品や原画など約350点を集めた回顧展「追悼水木しげる ゲゲゲの人生展」(朝日新聞社主催)が、東京・銀座の松屋銀座で開催中だ。初日の8日夜にはレセプションがあり、ゆかりの著名人らが「水木サン」の世界を楽しんだ。
妻の武良布枝(むらぬのえ)さんは、「私は能天気なもので、主人が(存在を)私に感じさせようと、働きかけてくれているのではないかなと。これだけたくさんの人に足を運んで頂いて、主人も感激していると思います」とあいさつ。水木夫妻をモデルにしたNHKのドラマ「ゲゲゲの女房」で妻を演じた松下奈緒さんは「まさか(展示が)へその緒から始まるとは。水木先生の人生と絵が一緒になって、ご夫婦の寄り添った世界観が伝わってきた」としのんだ。追悼メッセージのボードに描いた「目玉おやじ」は「何回も練習した。まるい中にまるを描くのは難しくて、私なりに一生懸命描いた」と話した。
松下さんも驚いたへその緒には、本人が生前、「国宝」と記した付箋(ふせん)を貼っていた。爆撃で左腕を失ったパプアニューギニアの激戦地ラバウルへも携帯した英和辞典には「家宝」。
会場には、自宅と仕事場を構えた東京・調布から「発見」されたこうしたお宝の数々が並ぶ。ほかにも「目で見るコンピューター」と呼んで作画資料とした写真スクラップ帳や、夫婦で作った軍艦プラモデル、話題となった出征前手記なども。小さいものが思いがけない場所に配置されているので、注意深く鑑賞したい。
作家の京極夏彦さんは「水木サンはいま、下界を見下ろして笑っているはずだ。残された我々は水木サンを笑わせるため、この世をもっと楽しくしなければ。そのためにも、この展覧会を見てエキスをたっぷり感じて」とあいさつ。民俗学者の小松和彦さんも「水木サンはまだ生きているみたい。次から次へと本は出るし、展覧会もあるし。『追悼』の文字以外は生前と同じだ」と語った。
長年のファンである佐野史郎さんは「亡くなってもまだ僕たちを驚かせてくれる。原画に触れて、画家としての水木先生の素晴らしさを、あらためて感じました」と語っていた。
展示の目玉は、映像演出で“妖怪が出る”書斎だ。仕事に追われ、机にしがみつく漫画家の前に、大小多様な妖怪たちが出現。行進したり、暴れ回ったり、何とか気をひこうとする。「水木サン」の運命やいかに!
3月20日まで。大阪、京都など、全国を巡回する。
一方、鳥取県立博物館でも「水木しげる 魂の漫画展」を4月2日まで開催中。こちらは作品主体の内容で、貴重な原画など約300点から制作の過程に迫る。(寺下真理加)
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