井山六冠、世界へ本格参戦 「それなりに戦える自信」
棋聖5連覇を決めた第6局直後の井山裕太六冠。日本の第一人者として世界戦に臨む=10日、新潟県南魚沼市
日本から世界へ。国内の囲碁界を制覇した井山裕太六冠(27)が、世界タイトルを独占する中国、韓国のトップ棋士が待ち受ける世界戦に本格参戦をする。20世紀まで世界に君臨した日本囲碁界復活の期待を一身に背負い、21日から大阪で始まる「ワールド碁チャンピオンシップ」(WGC)に日本代表として臨む。
10日夜、雪で白一色の新潟県南魚沼市で打たれた棋聖戦七番勝負第6局。井山は挑戦者の河野臨九段(36)を破って防衛を果たし、最終局を待たず棋聖5連覇を達成した。
終局直後、報道陣から目前に控えるWGCへの抱負を聞かれ「ベストを尽くしてどうなるか。すべてを出し切り結果を残したい」と答えた。「それなりに戦える自信はある。かなわない相手ではない」
WGCは井山にとって念願の世界の舞台だ。21~23日、大阪・梅田の日本棋院関西総本部で、中国予選を勝ち抜いたミイク廷(みいくてい)九段(21)、韓国ランキング1位の朴廷桓(パクジョンファン)九段(24)と国内最強の囲碁AI「DeepZenGo」の4者総当たりリーグで優勝を争う。
井山は昨年、史上初めて国内七大タイトルを独占。しかしタイトルを取れば取るほど、海外で開催される世界戦から遠ざかった。国内タイトル戦の日程との折り合いがつかないのだ。主要な世界戦の舞台である中韓の棋士は国内棋戦よりも世界戦を優先するが、日本は逆だ。出場機会の少ない井山は2013年のテレビ囲碁アジア選手権優勝後、中韓による世界タイトル独占を許してきた。
「強い相手と戦いたい」という勝負師の本能を抱えつつ、井山は国内タイトル戦を打ち続けた。棋風は過激の度を増した。優勢でも安全策を採らず、リスクを恐れず踏み込む。それで負けることもある。「なぜ」と聞かれれば「打ちたい手を打ちたいから」と答える。ことばの裏に「ひるんだら世界で勝てない」という思いがある。かつて本紙にそう語っていた。
日本棋院は今年、こうした井山の環境に配慮し、国内での世界戦となるWGC開催を実現させた。また、国内棋戦の主催各社と日程調整し、複数の海外棋戦出場も可能にした。「彼が打ち盛りのいま、できるだけチャンスを与えたい」。日本棋院の小林千寿常務理事は言う。
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