出所者雇う、闘病の社長「人はいつ変わるかわからない」
受刑者から届いた手紙と小沢輝真さん。「生きているうちは続けたい」と話す=札幌市東区
「身元引受先がない出所者を面接します」。札幌市の建設会社が、犯罪にかかわった過去を持つ人々を社員に採用している。社長の小沢輝真さん(42)は神経が侵されて歩行が困難になる難病を抱える。「残り少ない人生に生きた証しを」と一人でも多くの社会復帰を目指す。
札幌市東区の「北洋建設」。約60人の社員のうち、15人が詐欺や窃盗、器物損壊などの罪で有罪判決を受けた経験がある。
小沢さんは「仕事があると再犯率も下がります」と全国の刑務所や少年院にも手紙を送り、社員を募集。受刑者から応募があると直接面接に行く。
小沢さんの机には、「塀の中」から届いた手紙が積まれる。「こんな私ですが、働かせていただけないでしょうか」。先日、北海道の月形刑務所で服役中の男性から手紙が届いた。元暴力団員という。貧しい家庭に育ち、組織から足を洗うのに苦労したこと、借金を返そうと窃盗や詐欺の罪を重ねたことが丁寧な字でつづられていた。
重視するのは「働く意欲があるか」。出所直後でお金がない社員のため、1日2千円ずつ給料を先渡しする制度も設ける。窃盗などで懲役2年6カ月の執行猶予付き判決を受けた男性社員(48)は「犯罪歴があると、職に就くことも家を見つけるのも簡単ではない。働いて給料をもらえる喜びを肌身に感じ、感謝しかありません」と話す。
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