電脳空間の天才、巨大組織へ 歯車としてハッカーに対抗

写真・図版「デロイトトーマツ」のシニアコンサルタント、西尾素己さん。昨年20歳で入社した=山本和生撮影

■中卒でITの世界を駆け上がるサイバー対策専門家 西尾素己(にしお・もとき)さん(21)

世界最大級の経営コンサルティング会社「デロイト」に昨年11月、20歳で迎え入れられた。最終学歴は中学卒業。サイバー空間を操る天才的な手腕を買われ、管理職手前というシニアコンサルタントに就いた。「先輩社員が気さくに『西尾さん』と呼んでくれる」。東京駅を見下ろす仕事場で、当初の重圧は乗り越えた。

10歳の時、叔父がパソコンをくれた。画面の絵の色を自由に変えたいと始めたプログラミングは、1冊の解説書とネットサーフィンだけで学んだ。そのうち英語が読めるようになり、ドイツを拠点にサイバー攻撃に対抗する老舗ホワイト(善玉)ハッカーグループにつながった。政府組織などに攻撃を仕掛ける悪玉ハッカー集団を調べ、リアルな手口の一端を知った。14歳の時だ。

大阪府出身。家庭の事情で高専を中退したが、4カ月後、プログラミングの腕を買われてIT会社に採用された。新規事業立ち上げに携わると、IT大手のヤフーから声がかかり、サイバー対策や人材育成を担った。「プログラムを書ければ何でもできる」。技術者の叔父の一言が、今も心に響く。

デロイトでは、サイバー攻撃対策の専門家として、巨大組織の歯車になって動く。「自分だけでは動かせない山が組織の力で動く。初めての経験で毎日が楽しくて仕方がない」(文・須藤龍也 写真・山本和生)

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