橋桁事故で腕失った20代男性「工期迫り、急いで作業」
事故直後の新名神高速道路の橋桁落下現場=昨年4月22日、神戸市北区
神戸市で昨年4月22日に架設中の新名神高速道路の橋桁が落下し、10人が死傷した事故からまもなく1年。現場作業員だった20代男性はこの事故で、利き腕の左腕を切断する大けがを負った。失ったはずの左腕に痛みがあるように感じて、眠れない日もある。
中学時代はラグビーの選手。2014年5月、大阪市内の建設会社で働き始めた。「足場とかを組むのが好きだった。形になるのが楽しかった」。自分の会社を立ち上げる夢も描いた。
事故の記憶は無い。首の骨が折れたが、約2週間後に意識を取り戻した。医師から腕の切断を告げられたが実感がなかった。病室で「左腕を動かしたい」と母親に頼んだこともあった。
退院後は人目が気になり、閉じこもりがちに。時間をもてあまし、「また現場で働きたい」と考えるという。
事故の1~2週間前、柱の基礎部分が地面に数センチめり込んでいるのを見つけ、同僚と「怖いな」と言い合っていた。「工期が迫り、急いで作業させられていたと思う。安全対策を省いたのではないか。もうあんな大きな事故は起こして欲しくない」(小池暢)
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〈新名神の橋桁落下事故〉 架設中の新名神高速道路の橋桁(長さ約120メートル、重さ約1350トン)の西側が国道に落ち、作業員2人が死亡、8人が重軽傷を負った。NEXCO西日本が原因究明のために設置した技術検討委員会は昨年6月、地盤が弱く、支えていた柱が沈下・傾斜してバランスを崩して落ちたと結論づけた。兵庫県警は業務上過失致死傷容疑での立件を視野に捜査している。
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