「痛い」「エンジン切れ!」 車突入、病院内騒然
病院に突っ込んだ軽乗用車。割れたガラスや院内の机が外に運び出されていた=2日午後0時14分、大分市大手町3丁目、平塚学撮影
軽乗用車がいきなり正面のガラスを突き破り、突っ込んできた。13人がけがを負った大分市中心部の病院での事故。多くの高齢者がいた待合室には、叫び声が響き渡った。
事故が起きたとき、大分市の田中信雄さん(64)は大分中村病院の待合室にいた。テレビの前で診察待ちをしていると、突然「ガシャーン」と大きな音がした。入り口の方を振り向くと、軽乗用車が猛スピードで向かってきていた。
とっさによけようとしたが、足が動かない。車は3メートルくらい手前で止まった。ほっとして腰が抜けそうになった。
「一瞬の出来事だった」。軽乗用車は待合室に突っ込んだ後、少し右カーブして止まったようだった。タイヤの黒いスリップ痕が床にくっきり残っていた。「わー」「きゃー」。高齢者らが数十人いた待合室は叫び声に満たされた。
同じく待合室にいた大分市の男性(62)は、ガラスが割れる音に驚いた。「爆発したのかと思った」。軽乗用車がすぐ横に来て、初めて事故と気づいた。
男性によると、待合室には少なくとも数十人がいた。「痛い、痛い」。倒れている人もおり、悲鳴が聞こえた。運転していたのは高齢の女性で、助手席には男性が座っていた。車はエンジンを吹かしたままで、待合室のソファにぶつかり動けなくなっていた。「エンジンを切れ、切れ」。だれかが叫ぶ声が聞こえた。運転手の女性は、ぼうぜんとした様子だったという。
病院の待合室は、入り口から入ると正面付近に受付のカウンターがあり、その前にソファが10列ほど並ぶ。軽乗用車は正面入り口のガラス扉を突き破り、待合室の奥にあるテレビ付近まで進んだとみられる。
待合室の受付で会計をしていた大分市の女性(82)は「ガチャン」というガラスを破る音の方を振り向くと、待合室の中を車が通っていた。車が突っ込んだ所はソファや椅子などが散乱していた。叫び声が響きわたり、「とても日常の光景とは思えなかった」とおびえた様子で話した。
病院近くのホテルに勤める男性は、ガラスをたくさん積んだ車が横転したかのような、大きな音を聞いた。悲鳴を聞いたホテルのスタッフもいるという。男性は「まさか車が突っ込んだとは」と驚いていた。
現場近くの喫煙所にいた男性(56)はパトカーのサイレンの音で現場に駆けつけた。「最初は何が起きたかわからなかったが、病院のガラスや待合室のテーブルも壊れていた。奥に車があったので、突っ込んだとわかった。現場にいた皆さんがパニック状態になっていた」
■高齢ドライバーによる最近の主な事故(年齢は当時)
【2016年】
・3月3日 群馬県高崎市で73歳男性の乗用車が小学生の列に突っ込み、男児が死亡
・7月21日 福岡県大牟田市のスーパーに84歳男性の軽乗用車が突っ込み、3人が負傷
・10月28日 横浜市で87歳男性の軽トラックが小学生の列に突っ込み、男児1人が死亡、7人が負傷
・11月12日 東京都立川市の病院敷地内で83歳女性の乗用車が暴走し、2人が死亡
【2017年】
・2月7日 さいたま市で81歳男性の軽乗用車が別の車と接触事故。事故処理中に急発進し、1人が死亡、警察官が負傷
・4月21日 埼玉県入間市のショッピングセンター駐車場で76歳女性の車が他の車に追突するなどし、1人が死亡、5人が負傷
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