激化する高層マンション紛争 名古屋、反対住民の逮捕も
名古屋市で高層マンション建設をめぐる紛争が相次いでいる。堅調な需要を背景に開発を進める業者に対し、建設に反対する住民側の打てる手は意外に少ない。市の対応も、話し合いを呼び掛けるにとどまっている。
■一帯はものものしい雰囲気
「えっ、なぜ」。瑞穂区の薬剤師の男性(61)が愛知県警に逮捕されたのは、昨年10月。自宅前の15階建てマンション建設に抗議していて、現場監督にけがをさせた容疑だった。暴行罪で起訴され、公判中だ。
「突き飛ばされ、徐行のダンプに背中が当たった」という監督側と、「相手に触った覚えもない」という薬剤師の主張は大きく食い違う。工事はその後も続き、「ギャラリー公開中」の看板も出ている。
男性は建設反対運動のリーダー格だった。住民側は「裁判中マンション買いますか」といったのぼりや横断幕で対抗。毎朝、街頭宣伝をして、一帯はものものしい雰囲気になっている。
周辺は高さ規制の厳しい都市計画法上の「住居地域」で、木造の戸建てや5、6階建て集合住宅が並ぶ。社員寮だった土地約2500平方メートルが売られ、15階建ての高層マンション計画が住民に告げられたのは2015年10月だった。
住民は「マンションの影になり、日が差さない地域になってしまう」と反対。ビル風なども心配で、「6階建て以下にして」と説明会や市の調停、地裁への建築差し止め仮処分申請で主張したが、不調や却下になった。
市道から20メートルまでは「近隣商業地域」で、高さ45メートルまで建築可能。規制に合わせ、業者は敷地内の近隣商業地域部分は15階建て、はみ出す部分は6階建てにする予定。取材に「分譲マンション建設のため用地を買った。全部6階建ては無理だ」と話す。
ただ、市道は片側1車線の生活道路だ。以前は拡幅計画があったが、中止になった。現場近くに住む建築士渡辺正之さん(73)は「実態に合わせ、全部住居地域に指定していれば、無理な計画も出なかった。市の不作為こそ問題だ」と憤る。
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