キャッシュカード詐欺、首都圏で急増 百貨店員など装う
百貨店や全国銀行協会の職員などを名乗り、キャッシュカードをだまし取って金を引き出す手口の詐欺事件が急増している。1~4月の被害は全国で約11億円に上り、4月は1月の約3倍。現金の手渡しより心理的な抵抗が小さく、周囲が気づく機会も限られるため、詐欺グループが新たな手口にしていると警察はみている。
「私がバカだった」。さいたま市見沼区の無職女性(80)は、埼玉県警の捜査員に落ち込んだ様子で話したという。「テレビの報道を見ているときは、なぜ引っかかっちゃうのかと思っていた。悔しい」
県警大宮東署によると、4月24日、女性の自宅に「伊勢丹新宿本店のヤナイ」を名乗る男から電話がかかってきた。「あなた名義のクレジットカードで洋服約6万円分が購入された。買ったのはあなたか」
否定すると「全国銀行協会の電話番号」を教えられた。かけると協会職員を名乗る男が「情報が出回っている。キャッシュカードも新しくした方がいい」。手続きに必要だからと聞かれるままに、女性は暗証番号を伝えた。数時間後、この男の「同僚」を名乗る男が自宅を訪れ、キャッシュカード計6枚を渡した。
翌日、口座から現金が引き出されていたため、被害に気づいたという。
かたられる肩書は、ほかにも日本百貨店協会や警察官など様々。三越伊勢丹によると、伊勢丹新宿本店には4月末、ある名前の職員が実在するかを尋ねる電話が1日に約10件あったという。署は、同じような電話がかかってきた人からの確認の電話だった可能性があるとみている。
警察庁によると、全国の警察が認知した同様の手口の被害は今年1~4月に800件、総額は約11億800万円。昨年1年間の951件、約20億円に近づいている。東京、神奈川、千葉、埼玉の4都県の被害は529件、約7億4500万円と件数、総額ともに全国の約3分の2を占める。月ごとに増え、埼玉県では今年の被害の約半分が4月に発生した。
埼玉県警によると、被害者は高齢者が多い。特にひとり暮らしの場合、電話してからカードを渡すまで人に相談する機会が少なく、狙われやすいという。
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