がん患者と終末期 麻央さんの選択、専門家はどう見た
22日に亡くなった小林麻央さんは、亡くなるまで、夫の市川海老蔵さんや長男勸玄君、長女麗禾ちゃんら家族と自宅で過ごした。
がん患者宅に看護師を派遣し在宅療養を支えている、東京都墨田区の「訪問看護パリアン」看護部長の川越博美さん(69)は「家族の中で最期の日々を過ごすことは、患者本人や家族にとってとても良いことだ」と話す。
16日の麻央さんのブログでは、体調について子どもたちと言葉を交わしたとある。麗禾ちゃんが「あら!ママ、昨日よりひどくなってる! どうしたの。かわいそうに」と話したとつづっている。
川越さんは在宅療養について、「子どもたちは、お母さんの肌に触れ合うことができるし、食事をするときにも一緒にいることができる。病気と向き合うお母さんの生き様を見せることもでき、その姿は子どもたちの中に残っていく。家でみとることができれば、家族は、手を尽くして見送った、と思えるだろう」と話す。
終末期のがん患者は急に容体が悪化することがある。「自宅にいて大丈夫か」と、家族が不安に思うこともある。パリアンでは24時間電話による相談を受け付けており、深夜や早朝は当直の看護師が電話を受ける。何かあれば、在宅医と訪問看護師が駆けつける。痛みを和らげるために薬の量を調整するなど、きめ細かく対応している。
川越さんは「専門職が、残る日々にあってもふだん通りの生活を取り戻すことができるよう支援している」と話す。
自宅で療養するがん患者の支援をしている永寿総合病院(東京都)の広橋猛・緩和ケア科副部長は、麻央さんの悲報について「あごに転移するなどしていたようなので、相当な激痛と闘う日々だったのではないか。若い人は感覚が敏感で、高齢者よりも医療用麻薬を主とした痛み止めを多く用いなければならないことが多い」と話した。
一方で、ブログを読んでいた印象として、早い時期から治療だけでなく薬の副作用や痛みを和らげるケアも受けていたと見ている。「主治医との信頼関係があり、緩和ケアや看護スタッフの支援体制も行き届いていたと感じる」と話す。
最後となった20日のブログに麻央さんは「オレンジジュース」と題して、自身の写真と共にアップした。「ここ数日、絞(しぼ)ったオレンジジュースを毎朝飲んでいます。正確には、自分では絞る力がないので、母が起きてきて、絞ってくれるのを心待ちにしています」などとつづっていた。23日に都内であった会見で、夫の海老蔵さんは、死の間際に麻央さんが「愛している」と言ったと伝えた。
「難しい痛みを抱えながらでも、家族と一緒に自宅で過ごしたいという希望を周囲が支えられてよかった」と広橋さんは語る。
がん患者は最後の1~2カ月、急激に悪化していくとされる。「ブログでの発言をニュースで知る限りだが、そう遠くない時期に、こうした事態を迎えるのではないかと感じていた」とも話した。
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