本当の意味の「障ガイ者」を見せたい だから、僕は走る

写真・図版仕事帰りに多摩川の土手を走る矢野慎太郎さん=東京都世田谷区、池永牧子撮影

「障害者」とは、「自分自身」とは何なのか――。そんな問いと向き合い、走り続ける男性がいる。矢野慎太郎さん(48)。きっかけは、1年前に相模原市で障害者19人が殺害された事件だった。「自分はかわいそうな存在なのか」。その答えを見つけたいと思っている。

矢野さんの手足は、脳性まひの影響で硬直している。動きはゆっくりで、話す言葉もはっきりしない。

21歳の時、友人とともに障害者がリングに立つプロレス団体「ドッグレッグス」を立ち上げた。仕事をしながら「サンボ慎太郎」の名で約25年もリングに立ち、障害者や健常者のレスラーと熱戦を繰り広げてきたのは、「互いを知るきっかけがあれば、障害者と健常者はもっと近づける」という思いからだった。

現在は東京都内の自宅で両親と暮らし、週に5日、都内の病院でパートの清掃員として働く。

朝5時半に起き、約1時間かけて電車で通勤。午前9時から午後5時まで、病院の食堂や階段の掃除、ゴミの分別を担当する。月給は12万円ほど。休日はボクシングジムで体を鍛える。

病院で働き始めた当初、動作がぎこちない矢野さんと患者との間で接触事故があっては危険という配慮から、屋外での作業が多かった。「本人の努力もあり、今は院内の掃除も任せられるようになった」と職場の上司は言う。医師や看護師に大きな声で話しかけ、職場の仲間との飲み会にも積極的に出席する。

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そんな日常の中、あの事件が起きた。昨年7月26日。障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害され、元職員の男が逮捕された。

「障害者はかわいそう」「生きていても無駄だ」。その日の勤務後、男がそう供述しているとニュースで知り、ショックを受けた。ほぼ毎日思いをつづっているフェイスブック(FB)にこう書き込んだ。

《今日の仕事は終了しました。けれども今朝の相模原のニュースは悲しいです。弱い人間(ひと)な矢野慎太郎及びサンボ慎太郎けれども これからどこまで出来るか自分自身も判(わか)んないけれども これからも自分らしく生きて そして本当の意味の「障ガイ者」も見せたいです》

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Salva

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