北斎作品約1千点、研究者が寄贈 十数億円の価値か
風景版画で北斎の代表作「冨嶽三十六景 凱風快晴」。山肌に木目が浮かぶ貴重な初期の摺(す)りという(島根県立美術館提供)
松江市の島根県立美術館は22日、葛飾北斎(1760~1849)の研究者の永田生慈(せいじ)さん(66)=川崎市=から、所有する北斎や弟子の浮世絵の全作品約千点を寄贈されたと発表した。同館によると、9割以上が北斎の作品で、肉筆画や初期の摺(す)りも含まれ、約70年の画業を網羅しているという。総額で十数億円の価値があるとみられる。
永田さんは同県津和野町出身で、浮世絵専門の太田記念美術館(東京都渋谷区)の副館長兼学芸部長も務めた。16歳から50年にわたって北斎の作品を収集。1990年に開いた津和野町の「葛飾北斎美術館」(2015年閉館)で、自身が所有する作品を展示していた。閉館は、展示替えのために首都圏から往復する負担が大きかったためという。
寄贈される作品には、富士山を描いた「冨嶽三十六景」の初期の摺りや、「春朗(しゅんろう)」と名乗っていた20~35歳ごろの画業初期の現存する唯一の肉筆画「鍾馗(しょうき)図」などが含まれる。
松江市は、浮世絵の収集家・研究者として知られる桑原羊次郎(1868~1956)と新庄二郎(1901~96)の出身地。県立美術館は新庄コレクション計471点を所蔵し、うち約40点が北斎作品という。
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