民進、増税で勝てるのか ブレーンの慶大教授に聞く

写真・図版 「急性硬膜下血腫で死にかけ、一命をとりとめました。何度でもチャレンジできる社会を作りたい」=迫和義撮影

慶応大学教授・井手英策さん

民進党の新代表が前原誠司氏に決まった。前原氏が掲げる「All for All」をブレーンとして考えたのは、一人の学者だ。3月の民進党大会で社会全体で負担を分かち合うための増税の必要性を訴えた本人に、目指す社会像とは何なのか、そもそも民進党は信頼を得られるのか、そして対抗軸は作れるのかどうかを聞く。

――前原さんが代表選で勝利しましたが、多くの有権者は民進党に期待していないのが実情です。

「僕は、2人は質の高い議論をしていたと思います。枝野幸男さんは消費増税は国民の理解を得られないとして反対し、1兆円分の赤字国債を財源に保育士や介護職員の賃金アップを訴えた。前原さんは、財源論から逃げないことを明確に打ち出し、消費増税で暮らしを豊かにすると主張しました。タブーだった増税を打ち出した方が勝利したことは高く評価して良いのではないかと思います」

――しかし、どん底の民進党の信頼回復につながるでしょうか。

「10日余りの代表選期間で支持率が上がると思うほうが僕は変だと思いますが、民進党にはこれを契機にやるべきことがあります」

「野党共闘への反発を理由に前原さんを支持した人たちがいる。まずは党内で我々は増税を通じた生活保障で闘うんだ、というコンセンサスを整えないといけない。しかし、国民がうんと言わない限り、彼らはうんと言わないでしょう。だからこそ、国民に財源問題を語りかける運動を展開すべきです。増税は誰だってつらい。『なぜ、All for Allなのか』を説明する責任がある」

――そもそも「All for All」とはどんな社会ですか。

「今の日本は自己責任の社会だと僕は思います。つまり、自己責任で稼ぎ、貯蓄をし、あらゆる不安に自分自身の力で備える。成長が止まり、所得が20年にわたって落ち、貯蓄率が劇的に下がるなかでみんな苦しい。それでも、人々は自己責任を押し付けられている。これが社会不安の一番の理由です。政府は『あなたが自分でなんとかしなさい』と言い、責任を個人に押しつけてきた」

「日本から、『私たち』という概念が消えようとしていることに、危惧を抱いています。社会の仲間がみんなのために税金を払い、不安や痛みを分かち合う『私たち』を作ろう。それが、『All for All』です」

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