妻奪われ、2歳の息子との日々 犯罪被害者、条例へ期待
高羽悟さんは2カ月に1度、商業施設で事件の情報提供を呼びかけている=7月、名古屋市西区
名古屋市は事件、事故の被害者らに対する独自の支援金給付を来春から始める方針だ。性犯罪被害者への支援も拡大する予定で、関係条例の年度内成立を目指している。被害者側や支援団体からは期待の声が出ている。
「被害に遭った人が頑張ろうと前向きになれる支援が必要だ」
名古屋市西区稲生(いのう)町のアパートで1999年に殺害された主婦高羽(たかば)奈美子さん(当時32)の夫、悟さん(61)は力を込める。
事件の犯人はいまだに見つかっていない。発生当時、長男は2歳。「『どうなるんだろう』とこれからのことが心配なばかりだった」と振り返る。直後から市内に住む悟さんの両親の助けを受けられたため、悟さんは仕事を続けながら子育てを続けることができた。
その後、長男は希望通りの高校・大学へ進学したが、被害の連鎖を止めるための経済的支援の必要性を感じている。「テロ事件が増え、少しも悪くない人が事件に巻き込まれる時代。支援制度は準備しておかなければいけないということを理解してほしい」と話す。
市は、こうした声をふまえ、犯罪被害者らへの給付金を盛り込んだ条例の年度内成立を目指している。支援対象は殺人や傷害、交通事故、家庭内暴力(DV)の被害者や遺族。事件によるショックで仕事や日常生活に支障が出たり、収入が途絶えたりした場合の①相談②経済的支援③精神的支援の三つを柱にしている。また、加害者を相手取った民事訴訟で勝っても、加害者側に損害賠償の支払い能力や意思がないケースも少なくないことから、賠償を得られない苦痛に対する見舞金も検討する。
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