米アラスカ州の北西部、北極海に浮かぶサリチェフ島にあるシシュマレフ村は、写真家の故・星野道夫さんが約40年前に訪れ、紹介したことで、多くの日本人に知られている。6月下旬に訪問すると、足跡をたどることができた。

「この前もミチオの本を読んだという日本人が『泊めてくれないか』とやって来たよ」

自宅に星野さんが滞在した、クリフォード・ウェイオワナさん(75)は思い出話をしながら、自慢のパンケーキを振る舞ってくれた。ゲストブックには、日本人らしき書き込みが時折見られる。

シシュマレフの人々に滞在を希望する手紙を星野さんは出したが、ウェイオワナさんは「私だけが返事を出したんだ」。星野さんは、ウェイオワナさん宅の階段の下に置かれたベッドで寝起きして1カ月世話になった後、もう1カ月の滞在を希望したという。

その後もアラスカを拠点に星野さんは活動を続けた。ゲストブックのページをさかのぼると、「Michio Hoshino」の署名が1990年10月27日付で刻まれていた。

当時をしのばせる部屋の中では、ウェイオワナさんの家族がソファで休んだり、生まれたばかりの赤ちゃんをあやしたりしていた。(シシュマレフ=小坪遊)

ASAHI.COM