「世界の記憶」に「上野三碑」と「朝鮮通信使」

後世に残す価値のある歴史的資料を対象にしたユネスコ国連教育科学文化機関)の「世界の記憶」(旧・記憶遺産)に、国内候補の古代石碑群「上野三碑(こうずけさんぴ)」(群馬県)が登録された。日韓の団体が共同申請した「朝鮮通信使に関する記録」も登録が決まった。ユネスコが31日未明(日本時間)に発表した。一方、第2次大戦中に多くのユダヤ人を救った外交官・杉原千畝(ちうね)の資料(杉原リスト)は登録されなかった。

上野三碑は、飛鳥時代奈良時代前期、今の高崎市内に建てられた「山上(やまのうえ)碑(ひ)」「多胡碑(たごひ)」「金井沢碑(かないざわひ)」の総称。朝鮮半島からの渡来人との交流から生まれたものとされ、漢字や仏教の広がりなど東アジアの文化交流を示す資料だ。

朝鮮通信使朝鮮王朝から日本に派遣された外交使節団。豊臣秀吉の朝鮮出兵で両国の交流は途絶えていたが、江戸幕府が対馬藩を介して交渉し、1607年に朝鮮国王が使節団を再派遣して以降の約200年にわたる交流の記録が対象だ。韓国の釜山文化財団とNPO法人・朝鮮通信使縁地連絡協議会(長崎県対馬市)が共同で申請した。

落選した杉原リストは、日本ユネスコ国内委員会が初の公募で絞り込んだ2件のうちの1件。同委員会の関係者は「なぜ登録されなかったのか理由も公表されず、再申請するとしてもどう改善すればいいのか現時点では全く分からない」と困惑する。今回の結果は、今後国内選考の基準にも影響しそうだ。

慰安婦資料は「保留」

今回の「世界の記憶」には、日中韓などの市民団体が旧日本軍慰安婦に関する資料を申請。一方、日米の民間団体なども旧日本軍慰安婦を規律正しく扱ったとする資料を申請していたが、ユネスコはともに「登録保留」とし、話し合いを促す形になった。

2年前の前回、中国が申請した「南京大虐殺の記録」が登録され、日本政府が反発。ユネスコは今月、多国間で意見が異なる案件はまとまるまで審査を保留する制度を次回から導入することを決議した。菅義偉官房長官は記者会見で「決議を踏まえて、適切な対応がされた」と述べた。(後藤洋平、松井望美)

〈世界の記憶〉 歴史的な文書、絵画、音楽、映画などを保存、後世に伝える目的で1992年に始まった。世界文化遺産自然遺産や世界無形文化遺産と違い、国際条約に基づかず、個人や団体でも申請できる。国内委員会は公募を経て2件に絞り込むが、他国の団体などとの共同申請は対象外。「アンネの日記」や「マグナ・カルタ」など登録件数は前回までに計348件。国内では「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」「御堂関白記」「舞鶴への生還」など5件。

ASAHI.COM

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