三越伊勢丹、描けぬ成長戦略 高い人件費・リストラ遅れ
記者会見で新たな中期経営計画を説明する三越伊勢丹HDの杉江俊彦社長=7日、東京都内
百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングス(HD)は7日、2018年度から3年間の新たな中期経営計画を発表した。経営不振の責任を取るかたちでトップが交代してから約半年。新中計は人員削減や不採算事業の整理などリストラ策が中心で、成長戦略はまだ描き切れない。
中期経営計画の柱のひとつは、早期退職制度の大幅な見直しだ。今後3年間で全社員の1割弱に当たる800~1200人の応募を想定している。
年齢を50歳から48歳に引き下げて対象者を広げるとともに、通常の退職金に破格の最大5千万円を加算。通常の退職金を加えると7千万円程度受け取れる社員もいるという。杉江俊彦社長は7日の記者会見で「不安を感じる社員に選択肢を示すのが会社の義務」とし、「最終赤字を覚悟してもやり遂げることがV字回復につながる」と話した。
背景には、同社の売上高に占める人件費率の高さがある。16年度は売上高の9・4%を占め、高島屋(9・1%)、Jフロントリテイリング(6・1%)などより高い。バブル期に入社した社員が多く、首都圏で百貨店事業にかかわる約4千人の社員の半数が管理職だからだという。
不採算事業の整理では、債務超過の婦人服販売の子会社「マミーナ」を今年度中に清算する。営業赤字が続く高級スーパー「クイーンズ伊勢丹」を運営する三越伊勢丹フードサービスの株式(66%)も投資ファンドに売却する。
さらに、伊勢丹新宿店や日本橋三越など旗艦店に専門店を誘致するほか、東京・国分寺や横浜などで商業施設を運営する。こうした取り組みで、20年度までに、旧伊勢丹と旧三越の経営統合後で最高となる年間350億円の営業利益を目指すという。杉江社長は会見で「足元の業績は順調だが、このまま未来に向かえる体制ではない」と計画の意義を強調した。
■地方店の整理、ライバルに遅れ
ただ、地方にある不採算店の整理縮小は進んでいない。前社長の大西洋氏が対象に挙げた4店(伊勢丹松戸店、伊勢丹府中店、広島三越、松山三越)のうち、閉店が決まったのは伊勢丹松戸店のみだ。
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