孤立した母「一緒に幸せな国へ」 奪われた9歳の命
千葉愛実さんは亡くなる1~2カ月前、「ママと話してアメリカの大学に行くことにしたの」と話し、算数の勉強に力を入れ始めたという(2015年撮影、遺族提供)
■小さないのち 育ちを支えて
昨年6月。秋田市の児童養護施設で暮らしていた千葉愛実(めぐみ)さん(当時9)は、迎えに来た母親に駆け寄り、一緒にタクシーに乗り込んだ。回転ずし店で食事をし、ファストフード店でソフトクリームを食べ、母親の住むアパートへ。年に数回の外泊で、週末の2日間、親子水入らずの時間を過ごす予定になっていた。
しかし、施設に戻る約束の時間を過ぎても、愛実さんは戻らなかった。通報を受けた警察がアパートに立ち入ると、愛実さんはタオルケットにくるまれ、ベッドの上で冷たくなっていた。母親はその隣で、意識を失って倒れていた。腹に3カ所の刺し傷があった。
■小さないのち 育ちを支えて 児童養護施設から母親のもとに一時外泊していた9歳の女の子が亡くなった。無理心中を図ったとみられる母親は、精神疾患を抱え、行政の支援も途切れがちになる中で孤立を深めていた。だれかが手を差し伸べることはできなかったのか。裁判記録や遺族の証言などから事件の経緯をたどった。
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