衆院予算委員会11月28日
安倍内閣の政治姿勢や森友・加計学園問題などをめぐり、野党各党が追及。安倍晋三首相や閣僚・官僚はどう答弁しているのか。タイムラインで論戦を追います。
篠原氏「官邸、自動忖度機になっちゃったんじゃないか」加計問題
無所属の会は、原口一博氏から篠原孝氏(長野1区選出)に質問者がバトンタッチした。篠原氏は加計学園問題について質問。安倍晋三首相の友人である加計孝太郎氏が理事長を務める同学園の獣医学部新設の経緯についてただした。
篠原氏は「官邸とかですね、自動洗濯機ならいいですよ、自動忖度(そんたく)機ばっかしになっちゃったんじゃないか」と皮肉を述べ、「安倍政権は大大横綱だ。もっと品格を持って、正々堂々とやっていただきたい」と語った。
首相は「(加計氏は)長年の友人だが、私の地位を利用して何かしようとしたことは一度もない」と、改めて強調。さらに、学部新設に道を開いた国家戦略特区ワーキングチームのメンバーらの名前を挙げ、「(加計氏に便宜を図るよう)私が頼むことはありえない。私が指示したことはないということは、明らかになっている」と疑惑を否定した。
そして、首相はこう付け加えた。「友人だということから、李下(りか)に冠を正さず、私自身も反省すべき点は反省しなければならない」
首相、原口氏に「手ごわい相手だが、難病克服して」
「原口議員は、我々自民党にとって手ごわい相手だが、難病を克服して、さらに活躍していただきたい」
安倍晋三首相がこう語りかけたのは、無所属の会の原口一博氏。2016年12月に骨の難病と診断されたことを公表し、闘病しながら政治活動を続けてきた。今回の衆院選でも佐賀1区から無所属で立候補。自民党候補を破って当選を果たした。
原口氏は質問で、安倍首相から励ましのメッセージが届いていたことを紹介。「病院で闘病しているみなさんも、すごく勇気づけられた」と礼を述べた。そのうえで、首相に難病対策への思いを質問。自身も持病と闘っている首相は「難病対策はライフワークだ」と応じた。
首相「秘書官への来客、いちいち報告受けない」 加計めぐる面会問題
希望の党の今井雅人氏は、森友・加計学園問題に質問を集中させた。
加計学園の獣医学部新設問題については、今井氏は「悪魔の証明といって、加計学園に総理が関わったか関わっていないかを証明することはできないと言ったが」と切り出し、27日に自民党の田村憲久氏が首相を「擁護」した論理を逆手に取って追及。地元自治体関係者が首相官邸で当時の首相秘書官に会ったかどうか、といった点が解明されていないと指摘した。
そのうえで、今井氏は「日本国政府はこれくらいのことを明らかにする能力がないわけではない。明らかにしてほしい。これは悪魔の証明じゃない」とたたみかけた。
だが、安倍晋三首相は答弁で「秘書官は日々多くの来客を受けるが、私自身が分刻みのスケジュールをこなす中で、秘書官への来客についていちいち報告を受けることはない」と述べ、従来のスタンスを崩さなかった。
午後の質問始まる
衆院予算委員会は午後1時に再開した。
衆院予算委は休憩
衆院予算委員会は午前中の質疑を終えた。午後1時から再開し、希望の党、無所属の会、共産党、日本維新の会が質問する。
午前中はまず、立憲民主党の川内博史氏と逢坂誠二氏が学校法人「森友学園」問題を追及。国有地の売却価格をめぐる安倍晋三首相のこれまでの国会答弁の整合性や、首相の妻昭恵氏の国会招致などについての攻防があった。ただ、目を引くような新事実が明らかになったり、政府側が一連の手続きに大きな非を認めたりするような新展開はなかった。
希望の長島昭久氏は安全保障と待機児童問題、井出庸生氏は性的少数者差別と農業を取り上げた。
井出氏、同性パートナー出席反対の竹下氏発言に「差別助長しかねない」
午前最後の質問者は希望の党の井出庸生氏(長野3区選出)。自民党の竹下亘総務会長が自民党会合で、宮中晩餐(ばんさん)会への同性パートナー出席に反対の立場を明らかにした発言を取り上げた。
井出氏は「私は、日本の伝統の中で同性、性的少数者の形態がなかったとは考えていない」と切り出し、「晩餐会に国賓のパートナーが同性だった場合、むしろ入れても良いという意見もある。長い時間を掛けてLGBTの問題を認知を広げてきた流れの中で、大変残念な発言だ」と述べた。
そのうえで、井出氏は「いずれも差別を助長しかねない、問題ある発言だ」として、自民党の閣僚経験者らベテランたちの最近の発言を取り上げた。具体的には、山本幸三・前地方創生相のアフリカをめぐる「あんな黒いの」との発言や、多産の女性への表彰を求める山東昭子参院議員の発言。これら一連の発言について、安倍晋三首相の見解をただした。
首相は「ご指摘の発言は政治家個人の見解を述べたもので、政府の立場でコメントは控える」と述べるにとどめた。井出氏は首相が自民党幹部の人事権を持つ総裁であることを念頭に、「自民党総務会長に任命したのはどなたかと伺いたいところだ」と不満をにじませた。
首相、北朝鮮は「瀬戸際戦略。『落ちる、落ちる』と見せかけ」長島氏質問に
立憲の逢坂氏に続いて、希望の党の長島昭久氏(東京21区選出)が質問に立った。長島氏は、得意とする外交・安全保障政策を取り上げた。北朝鮮について、圧力を掛ける必要性を述べた上で「暴発のリスクをどう考えるか」とただした。
安倍晋三首相は「果たして暴発するかは、詳細な情報収集、分析をしなければならない」と答弁。その上で、暴発論についてこう指摘した。
「北朝鮮は暴発するかもしれない、ということを最大の外交的なテコに使ってきた。瀬戸際戦略だ。『落ちる、落ちるぞ』と見せかけるが、落ちたらおしまいということは、やっている本人はよく分かっている。暴発するかもしれないことにたじろげば、まさに彼らの思うつぼになる」
これに対し、長島氏は「暴発して戦争になったら、被害を受けるのは韓国と日本だ。拉致被害者の命も危うくなる」と指摘した。
首相「部下を信頼するのは当然」 森友問題
立憲民主党の川内博史氏が質問を続ける。「過去の答弁で事実に反する答弁がなされていた場合は、対応するか」。安倍晋三首相は「私の答弁でですか。私は申し上げたことはない」。野党席から「えーっ」と声が上がる。
首相は続けて「私自身で申し上げたのは、(財務省が)適切な価格で売買していると信頼している、と申し上げた。部下を信頼するのは当然だ。私が調べて私が適切だ、と申し上げたことはない。調べていただければ明らかだ」と述べた。
川内氏に続き、同党の逢坂誠二氏(北海道8区選出)が質問に立った。逢坂氏は「引き継いで確認する」とつなぐ。「総理は『適正だ』とご自身の口で言ったことはないか」と、繰り返し確認した。
首相は「(過去に)2点答弁している。1点は、国交省・財務省を信頼しているとの話。もう1点は、『財務省・国交省から適正に手続きが行われ、適切な算定がなされたとすでに説明しているところだ』。つまり財務省・国交省の説明を紹介した」と述べた。
首相は、自身が「適切だ」と断定したわけではないと強調した。紙を読みながら答弁しており、自身の過去の答弁が突っ込まれることを想定し、二つの答弁を洗い出して調べていたようだ。
財務省、音声データ内容の大半認める 森友問題
野党質問のトップバッターは、立憲民主党の川内博史氏(鹿児島1区選出)。今国会では衆院文部科学委員会の野党側筆頭理事として、「質問時間問題」の最前線で与党と向き合ってきた。
取り上げたのは森友学園問題。「昨日、音声データの存在を政府として(財務省)理財局長がお認めになった」。学園側と近畿財務局側とのやりとりを収めたとされる音声データについて、27日の予算委で政府が内容について認めたことを取り上げた。
川内氏は、報道などで紹介されたデータをもとにした近畿財務局側とみられる人物たちの発言を列挙。「ゼロに近い金額まで努力する作業をやっている」「1億3千万円を下回る金額はない」「分割払いで返すやりかたもある」「劇的に月額負担料が安くなる」――。その上で、政府に対して「やりとりをお認めになるか」とただした。
答弁に立った太田充理財局長は「45分間の音声データ、先方が一方的に録音されたものだが、昨年5月半ばごろのものだと承知している」と、データの内容にあるやりとりを改めて認めた。ただ、「(川内氏から)お話があったのは、中に入っているものもあれば、それ以外のものとして報道されているものもある。今の発言すべて45分の音声データのものではない」。大半について認めつつ、川内氏が紹介した中で「下にあるゴミは国が知らなかったので、きっちりやる必要があるというストーリーはイメージしている」との下りは含まれないと指摘した。
衆院第1委員室
衆院予算委員会スタート 野党各党が追及へ
安倍晋三首相が出席して国政全般が議論される衆院予算委員会は28日午前9時から、前日に続き2日目の審議が始まった。前日は与党の質問時間が5時間あり、安倍政権と相対する野党は2時間のみの質疑だったが、今日は夕方までの7時間すべてが野党の割り当て。立憲民主党、希望の党、無所属の会、共産党、日本維新の会の順に質疑する。
前日に続き、「森友・加計学園」問題、消費増税や教育無償化、外交・安全保障などが議論される見通し。安倍首相は「丁寧」「謙虚」な答弁を掲げているが、前日の与党質問では政権への援護射撃のような質問も少なくなく、野党質問に対する首相の姿勢は従来とあまり変わらなかった。野党の追及に、首相がどのような態度で説明をするのかも注目される。
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