日馬富士の暴行、なぜメディア過熱 「娯楽として消費」
横綱・日馬富士が引退する原因になった暴行問題。ソーシャルメディアやテレビは大にぎわいとなった。関連する総ツイート数は136万件に上り、民放の朝の情報番組は連日、時間を割いた。横綱が当事者になり、貴乃花親方が沈黙を貫くなど「役者」がそろったこともあるが、大相撲に関心のない層まで巻き込んだとみられる。どうしてここまで?
ツイッター利用者が「異変」を察知したのは、問題発覚前日の11月13日午後1時33分、日本相撲協会の公式アカウントが貴ノ岩の休場を投稿してからだ。「脳振盪(しんとう)、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋(ずがい)底骨折、髄液漏の疑い」――。直後から「稽古で? 事故レベルでしょ」などと様々な臆測が飛び交い、まず尋常でないけがの程度が多くの人の関心を呼んだ。
「日馬富士」「相撲協会」など暴行問題関連のキーワードで拾い、無関係なものを極力除外したツイート数は、スポーツニッポンの報道で問題が発覚した14日から引退表明の29日までの16日間で136万869件。話題が少なかった昨年の九州場所は約37万件だっただけに、今回は相撲ファンを超え、関心が広がったといえる。
コラムニストの小田嶋隆さん(61)は一連の騒動の背景に日本の「ムラ社会」をみる。「日本人はもともと、先輩後輩の人間関係や義理人情に絡むもめごとがすごく好きですよね」。モンゴル力士会、相撲界、日本社会。小田嶋さんは「この三つの同心円構造になっていて、結局、ムラ社会で全体の和を乱す者をたたく。そしてそれを娯楽として消費している」という。相撲界という狭い世界で起きた騒動は、実は自分たちの日常でも起こりうると捉えるから、世間が反応したという見方だ。小田嶋さんは「我々は自分自身であることより、自分たちが帰属する組織の規範を強く意識している。なぜ他人を放っておけないのか、僕自身はすごく謎ですね」。昨今、過熱する不倫報道にも同じ根っこがあると感じる。
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