危機迫る日本アルペン界 迷うエース湯浅、若手も育たず

写真・図版1回目途中棄権に終わった湯浅直樹

日本アルペンスキー界の「終わりの始まり」を懸念する声もある。日本男子のエース、湯浅直樹(スポーツアルペンク)がもがいている。

フランス・バルディゼールで10日にあったW杯男子回転で1回目に途中棄権。開幕から2試合続けて得点(30位以内)を挙げられなかった。バルディゼールは昨年10位に入り、復活への確かな一歩を刻んだ地。しかし、今年は雪が降る悪条件のなかスタートし、10旗門過ぎの細かな斜面変化についていけずコースアウト。顔をしかめたまま、取材エリアに姿を現した。「斜面変化の後にうまくタイミングが取れなくて。練習でも(同じような)ミスが多く、それが結果にでている」

開幕戦だった11月のフィンランド・レビ大会では1回目43位とタイムを伸ばせず、2回目に進めなかった。緩斜面を苦手とする湯浅にとっては、割り切りやすい結果と言える。その後、イタリアスイスで3週間ほど練習し、この第2戦にかけてきた。

W杯で自身最多の7試合で30位以内に入った昨季はレビ大会の後、スキー板のスタンスを20センチほど広げる滑りを覚え、安定感を増して復活につなげた。今季も大瀧詞久チーフコーチによれば、「昨季やって良いフィーリングと速く滑れる確信があったので、継続して精度を上げようとやってきた」。

致命傷でもある、十年以上前に軟骨を欠いた左ひざは悲鳴を上げていない。ボランティアの医師が同行する中、2日滑っては2日休養するなど十分に対策は取っている。

それでも、結果を残せなかった。気になるのは、いつもは自信に満ちあふれた湯浅の言葉に迷いが感じられることだ。「調整がうまくいっていないから、自信をもってスタートを切れていない。悪い流れ。昨季は1、2回目をまとめれば10位に入れる公算があったが、今は2回目をまとめても15位ぐらいまで。一つレベルが下がっている気がする」

岡部、木村、皆川、佐々木ら築いた道が

2006年トリノ五輪で7位に入り、11年世界選手権で6位入賞した湯浅も、34歳になった。岡部哲也、木村公宣、皆川賢太郎佐々木明の各氏が世代をつなぐように競い合いながら築いた日本アルペン界だが、湯浅に続く世界で戦えるレーサーは育っていない。

湯浅は、来年2月の平昌(ピョンチャン)五輪に向けて再び輝きを放てるのか。「うだつの上がらない自分の気持ちをもう一回整理して、第3戦に臨んでいきたい。中途半端な滑りをしていると、得意なところも良い結果を望めない」。12年に自身唯一の3位に入り、昨季は8位だったイタリアマドンナディカンピリオ大会は22日にある。(笠井正基)

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