大村益次郎の「広すぎる」おでこ肖像画、描かれた経緯は
長州に迫った幕府軍を蹴散らし、「官軍」になってからは上野の山に立てこもった彰義隊を鎮圧。明治政府では近代軍隊の創設に邁進(まいしん)した「軍事の天才」大村益次郎(1825~69)。目を疑うほど縦に伸びた広いおでこの肖像画は、歴史の教科書でもおなじみだ。だがこれは、本人を見て描かれたものではない。大村の「顔」を証言からたどってみると――。
肖像画の作者は、イタリア人の銅版画家エドアルド・キヨッソーネ。明治政府の招きで来日し、大蔵省紙幣寮(現在の国立印刷局)で紙幣や印紙、郵便切手などの原版を製作。明治天皇や西郷隆盛、大久保利通らの肖像画も手がけた。
肖像画作製の経緯は、昭和19(1944)年に刊行された「大村益次郎」に詳しい。明治2年、大村は凶刃に倒れる。しばらくして、その功績をたたえようと、銅像を建てる話が持ち上がった。だが、生前の大村を収めた写真が見当たらない。そこで、大村の弟子が記憶に基づき描いた肖像のスケッチをキヨッソーネが手直しした。
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