復興住宅、見守り続けたいのに…神戸、迫る退去期限
仮設住宅や復興住宅でみとった人々の記録を広げる長尾政三さん=神戸市長田区
阪神・淡路大震災で妻を亡くした神戸市長田区の長尾政三(まさみ)さん(69)は被災者の孤独死を防ぐ活動を続けてきた。仮設住宅に入居していたころはお年寄りを訪ねて回り、今も定期的に食事会を開く。そんな長尾さんに市から「明け渡し通知」がたびたび届くようになった。長尾さん宅は市が現在の都市再生機構(UR)から20年契約で借り上げた復興住宅で、返還期限が約2年後に迫っているからだ。
震災で、当時暮らしていた長田区のアパートは全壊。妻の裕美子さん(当時43)は、入院していた近くの病院の天井の下敷きになって亡くなった。
3人の子どもとともに区内の西代(にしだい)仮設住宅へ入居。そこで孤独死するお年寄りの多さに衝撃を受け、1996年4月、被災者を見守るボランティア団体「長寿友の会」を立ち上げた。
毎日、仮設のお年寄り宅を回り、健康な人は「○」、要注意の人は「△」とノートに記入し、情報をボランティアと共有。身寄りのない人が亡くなると葬儀を営み、毎年1月17日には合同慰霊祭を開いた。
99年に区内の借り上げ復興住宅「フレール長田」に転居したが、多い時には週3回のペースで各地の復興住宅を訪ね、入居するお年寄りを誘っては自作の料理を振る舞った。
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