カレー290円 格安メニューを10年守ったレストラン
落ち着いた雰囲気の店内=千葉県我孫子市のレストラン「コ・ビアン」
千葉県我孫子市のJR我孫子駅近くにあるレストラン「コ・ビアン」が、40周年記念の格安メニューを1年延ばしにして10年続け、昨年11月に50周年を迎え、今も続けている。チキンカツ定食やカレーライスは290円、チキン和風スパゲティは250円――。他もほとんどが数百円。ファンは格安メニューをずっと続けてほしいと願っている。
東京の喫茶店で修業した小熊覚三郎さん(85)が、1967年11月に開いた。「フランス語のような店名だが、実は『あびこ』をひっくり返しただけ」。小熊さんは、江戸時代に創業し、薪や炭などを扱っていた店の10代目。我孫子に住んだジャーナリスト杉村楚人冠(そじんかん)の家に炭を納めていた縁で、楚人冠の孫が店名をつけてくれたという。
最初は喫茶店だったが、次第に料理が人気になって衣替えした。駅近くと立地も良く、土日やランチ時には行列ができるようになった。2003年に近くにもう1店をオープン。両店ともヨーロッパ調の建物で、内部はステンドグラスなどが壁に飾られて落ち着いた雰囲気だ。
多くの人においしい洋食を食べてほしかったから、値段は安くしようと知恵を絞った。全国各地のつてを頼り、業者から食材を安く仕入れる。先の分まで現金で前払いし、値引きしてもらうのだという。
40周年の2007年、チキンカツ定食を税別290円にするなどの特別メニューを両店で始めた。単品で300円だったチキンカツに、ご飯とみそ汁などをつけた値段。「安い」と評判になり、1年限りの予定だったがやめられなくなった。
1年、2年、3年……。特別メニューは10年続き、そのまま50周年記念の特別メニューに。ホタテフライ定食が450円、豚カツ丼が590円など、他のメニューもほぼ当時のままの値段で、初めて訪れた客は驚くという。
30年以上前からのファンだという我孫子市の三谷和夫さん(89)は「安いだけでなくおいしい。店内は高級感もあって、知り合いを連れてきても喜んでもらえる。このままの値段でずっとやってくれれば助かる」と話す。
こうしたファンの声に小熊さんの孫で、経営と調理を担当して店を切り盛りする啓太さん(26)は「当分は維持できる。ただ、いつまで続けられるか。店の拡張などで売り上げを増やせたらいいのだが」と頭を悩ませている。(三国治)
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