いとうせいこうさん「会うたび影響」 金子兜太さん死去

20日に98歳で亡くなった俳人の金子兜太さんは、俳句の世界を革新し続ける開拓者であり、また戦争の体験者として平和を訴え続けた存在でもあった。交流のあった人たちから、悼む声が相次いだ。

「お~いお茶 新俳句大賞」の審査員をともに務めた作家・クリエーターのいとうせいこうさん(56)は、「会うたびに深く影響を受けてきた。ひとつの山脈を幻視してしまうほどの巨大な想像力を五七五の定型へと削(そ)ぎ、それを社会の歴史へも結びつけた」とコメントした。「共に東京新聞の『平和の俳句』の選者となっていた昨年にはついに『すべての日本語が詩言語だ』と話され、その文学観にど肝を抜かれた。そして、私にとっては人なつっこい笑顔そのものだ」

俳誌「ホトトギス」名誉主宰で、30年以上ともに朝日俳壇の選者を務めてきた俳人、稲畑汀子(ていこ)さん(87)は「お互いケンカばかりしてきたけど、もう出来ないと思うと寂しくなっちゃう」と話した。

稲畑さんは有季定型の伝統派の代表として、前衛的な俳句を詠んだ金子さんと俳句論をたたかわせてきた。「お互いに自分の意見をはっきり言う人間で、俳句のこととなると、絶対に引かない。金子さんのおかげで、『私は正統派の俳句でいこう』という意欲がますます強まった」と振り返った。「俳句に社会性を求めるなど、独自の考えを持っていた。いなくなってしまったと思うと、やっぱり寂しい」

同じく朝日俳壇選者の俳人、大串章さん(80)は「戦争に対する思いが体にしみついていて、平和なくして自分の俳句はないという思いが強かった」。選句会での様子を「自分の作風と違っても、小さいことにとらわれないで選ぶ。根底に人間的な大きさ、優しさがあった」と振り返った。

朝日俳壇選者の俳人、長谷川櫂(かい)さん(64)は「選句会で毎週、大きな詩魂に触れ、俳句と生き方を学ばせてもらった。論争しても相手を最後まで追い詰めない人だった。これで『闘う戦後俳句』が終わった」とコメントした。

朝日歌壇選者の佐佐木幸綱さん(79)は歌人だが、1960年代からのつきあい。金子さん主宰の俳誌「海程」創刊まもない頃の座談会に出たこともある。「俳句・短歌・詩が親しい時期で、新しいものを取り入れようという空気があった。お互い、文学っぽくなかったから気が合った。金子さんは自由。季語があってもなくてもいいという考え方。僕もそう。『今なんだ』ということなんです」

ASAHI.COM

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