四国のツキノワグマ、保全へ本腰 九州は絶滅…苦い歴史
木によじ登り、仕掛けられたハチミツを探るクマ。後方からもう1頭が近づいてきている(昨年8月18日、徳島県の剣山系、日本クマネットワーク提供)
いまや十数頭とも言われ、絶滅寸前の四国のツキノワグマを、50年後に100頭に――。全国のクマ研究者や自然保護NGOがタッグを組み、保全活動に乗り出した。絶滅してしまったとされる九州の二の舞いは避けられるか。
朝もやが残る森にクマが現れ、樹上に仕掛けられたハチミツをまさぐる。別の1頭も近づいてきた。
研究者や学生ら約320人でつくる日本クマネットワーク(JBN)が昨年8月18日朝、徳島県の剣山(つるぎさん、1955メートル)周辺で撮影に成功した動画だ。徳島、高知両県にまたがる広葉樹林帯に7~9月、44台のカメラを置いて自動撮影を試みたところ、うち1台に計8回、クマが映っていた。
四国では1970年代まで高知県西部の四万十川流域にもクマが生息していたが、85年を最後に記録は絶えた。環境省は96年時点で剣山周辺の生息数を多くて数十頭と推定しているが、最近10年間で確実に把握できた個体は十数頭だけだ。
クマは基本的に植物を食べ、ブナやミズナラなどの落葉広葉樹林を好む。冬眠を控えた秋に、これらの実であるドングリを大量に食べるためだ。
針葉樹拡大の結果…
だが、林業が盛んな四国では戦後、スギやヒノキといった針葉樹の人工林が拡大し、今は森林の6割超を占める。針葉樹の皮をはいでなめる習性があるクマは害獣とされ、70年代まで自治体も駆除を奨励した。
ただ、数の減少で86~87年に高知、徳島両県がクマの捕獲を禁止した。林業の不振で人工林の拡大も止まった。それでもここ30年、クマが増えている傾向はない。やはり森林開発が盛んだった九州ではクマの保全策が講じられないまま、環境省は2012年に絶滅と判断した。
「四国まで絶滅させるわけにはいかない」。JBNは昨年から、日本自然保護協会(東京)、四国自然史科学研究センター(高知県)と手を組み、保全活動をスタートさせた。絶滅を回避できる最少の数とされる100頭が目標だ。
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