壊れていく妻の心、消えた笑顔 精神科を受診したけれど
人と車が行きかう雑踏のなかで、妻は被害を打ち明けた=大阪市北区梅田
妻はサバイバー:2(マンスリーコラム)
それは、人の心が壊れていく過程を見せられるようだった。
私が帰宅すると、妻はデスクライトだけをともした暗い部屋にいた。
目に涙を浮かべ、「衝動的に自殺しそうで怖いから、預かってほしい」。そう言って、手にしたカッターナイフを差し出した。
妻の話に「あの男」という言葉が出てくるようになった。外に出ると、「歩いている人の顔が、あの男にみえる」とおびえた。しかし、独りで家にいると男が現れそうな気がして、ベランダから飛び降りたくなるという。
唯一の癒やしだった過食嘔吐(おうと)も気持ちを鎮めてくれない。「怖い、怖い、どうしようもなく怖い」と震えた。
ASAHI.COM