「なぜ歩道に重機が…娘返して」事故1カ月、遺族の思い
大阪市生野区の市道交差点で、工事中の重機が突っ込み、下校中の聴覚支援学校の児童と教諭の計5人が死傷した事故から1日で1カ月となった。亡くなった女児の両親が朝日新聞などの取材に初めて応じ、「なぜ事故は起きたのか」とやり場のない思いを語った。
「あの日から『なんで、なんで』と考え続ける日々。娘を返してほしい」。大阪府立生野聴覚支援学校小学部5年の井出安優香(あゆか)さん(11)=同府豊中市=の父努さん(45)と、母さつ美さん(46)は声を絞り出すようにして語った。
安優香さんは生後1カ月で先天性の難聴とわかった。補聴器を付けて大きな音がわかる程度。だが「それを苦に感じず、いつもにこにこ明るい子だった。家族のムードメーカーだった」とさつ美さんは話す。
同校では3、4年生の頃から一人で通学している。安優香さんは電車やバスを乗り継ぎ、片道1時間かけて通っていた。「通勤ラッシュの車や自転車にぶつからないだろうか」。毎日、家に帰ってくるまで心配していた。
事故が起きた2月1日の朝、努さんがバレンタインデーのプレゼントを期待して「14日は何があるんかな」と手話で聞くと、安優香さんは「内緒」と照れ笑いした。夕方、病院で目にしたのは心臓マッサージを受ける娘の姿だった。目にはうっすらと涙がたまっているように見えた。「死にたくないと、怖くて流した涙だったのかな」
事故から1カ月後の1日、両親は事故現場を訪れた。わが子がはねられた地面を手でなでながら、「一緒に家に帰ろう」と語りかけた。
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