今春、引っ越しピンチ 待遇改善の宅配業界へ転職相次ぐ

写真・図版今年は例年以上に引っ越しスタッフが不足しそうだ(ヤマトホールディングス提供)

春の入学や就職、人事異動の時期を控え、希望日に転居できない「引っ越し困難者」が発生する懸念が例年以上に高まっている。宅配業界との間で人材の争奪戦が激しくなり、ドライバー不足が見込まれるためだ。採用コストが高くなれば利用料金の値上げを招きかねず、「宅配危機」の余波が思わぬ形で出ている。

「引っ越しはできるだけ早く業者に申し込んで下さい。荷物を少なくして宅配便で送ることもお勧めします」。東京都千葉県で女性専用の学生寮を運営する北園会館は先月から、見学の入居希望者らにこう説明している。提携の引っ越し業者から「例年以上にドライバーの人手が足りず、依頼を断る可能性もある」と告げられたからだ。「これまで、そんなことはほぼなかった」(広報)。国立大の合格発表が続いており、地方の学生の引っ越し予約は今後さらに増える。

企業や官庁の人事異動もあり、3月下旬~4月上旬は業者にとってはかき入れ時だが、今年はやや状況が違う。アップル引越センターの文字放想(もんじゆきお)社長は「今年は依頼を100件以上、断らざるを得ない。人手が3割前後足りない」という。

違法な長時間労働の発覚をきっかけに宅配業界がドライバーらの待遇の改善に踏み切り、その影響で、引っ越し業界からの転職が相次いでいるという。アップルでは昨年、正社員ドライバー約10人が流出した。引っ越しの学生アルバイトも、日給を例年より約3千円増の1・6万円前後にしたが、人手の確保は芳しくない。きつい仕事として敬遠されがちなうえ、他に割のいいバイトがあるからだ。

求人サイト運営のマイナビによると、引っ越し関係の求人は「昨年の同時期の2倍ぐらい出ている印象」(広報)という。

ASAHI.COM

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