作業員25人で1日2km… 雪国悩ませる「排雪」とは
雪捨て場にはトラックが次々と雪を運び込んだ=2月9日、金沢市
すっかり春めいてきた地域もあるが、この冬は各地で大雪に見舞われた。実は、雪は取り除く(除雪)より、捨てる(排雪)方が手間やお金がかかるらしい。どういうことなのか。
「長年住んでいるが、こんなことは初めてです」。北海道旭川市の男性(37)は戸惑う。市内では雪が降らない日でも朝夕の渋滞がひどい。あちこちで道路に雪が積み上がり、2車線の道路が1車線状態になっているからだ。男性は「譲り合いでなんとか車が走れている状態」と話す。滝川市では雪がやんだのに、路線バスが全面運休した日もあった。北海道中央バスの担当者は「バスの幅と同じくらいしか道幅がなかった。今年は雪とのいたちごっこだった」と言う。
道路上の雪を道路脇などによけるのが除雪。それをダンプカーなどで雪捨て場まで持っていくのが「排雪」だ。除雪しても、排雪が滞ると、雪がやんでも市民生活に影響が出る。国土交通省によると、雪が多いのは日本海沿岸の山側だが、今年は沿岸の平地にある都市部も大雪になった。しかも、気温の低い日が続いて雪が解けずにたまりやすくなった。
過去5年の平均と比べ、2・5倍以上の雪が降った福井県では、雪捨て場の設営のため自衛隊が出動。福井市の足羽川河川敷で、次々と運び込まれる雪を効率的に収容できるよう、重機を使ってならしたり、固めたりした。同市は市民が自宅近くに雪を捨てやすくするため、公園や学校のグラウンドなども開放。1981年の豪雪時には、福井城の堀に雪を捨てる人もおり、県の担当者は「危険なのでやめてほしい」と訴えるほどだった。福井県内ではこの冬、除排雪費が100億円を超え、さらに増える見通しだ。秋田県などでも過去最高になった。
札幌市でも昨年度、除雪費は45億円だったが、排雪に123億円もかかった。生活道路の場合、除雪ならば重機1台に2人がついて一晩に約10キロメートル分できるが、排雪となると、ダンプカーやショベルのほか、雪山を崩すための重機「バックホウ」や雪を積み込むためのロータリーなど機械が19台、誘導員を含む25人以上の人手が必要。それでも1日に約2キロしかできない。市によると、幹線道路で約100メートルを1回除雪するには約3千円ですむが、同じ区間の排雪には、80倍の約24万円が必要になる。除雪を担う建設業界の人件費が上がっているからだ。
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