昭和天皇が肌身離さなかった復帰記念メダル 皇室と沖縄
昭和天皇が、肌身離さなかった品がある。戦後も米統治下に置かれた沖縄の日本復帰(1972年5月15日)を記念して作られたメダルだ。元側近が打ち明けた話では、愛用の懐中時計に付けてベストのポケットに入れ、晩年、病床にあった時も近くに置いた。
メダルの表面には、那覇市の守礼門が描かれていた。戦後全国を巡った昭和天皇が唯一訪れることができなかった沖縄のシンボルだ。明治政府が琉球王国を解体して日本に併合した琉球処分後、皇室を崇拝させる「皇民化教育」が徹底され、太平洋戦争の地上戦では多くが犠牲になった。沖縄に、皇室に対する複雑な感情がくすぶるゆえんだ。
さらに79年、天皇が終戦直後、米国による軍事占領の継続を望んだという「沖縄メッセージ」の存在が米公文書館の資料から明かされる。近現代史を研究する神戸女学院大の河西秀哉准教授は「昭和天皇にとって沖縄は、本来の『日本』に含まれていなかったと推測できる」と話す。
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