宮崎駿監督とは対照的、「実験」に挑んだ高畑勲さん
アニメ監督・高畑勲さん死去
丸っこくてシンプルな「ハイジ」。ほお骨が張ったリアルな「おもひでぽろぽろ」。粗い鉛筆の描線が走る「かぐや姫」。一見スタイルは異なるが、一貫してアニメーションならではの「実感」を追究した。「絵を『よすが』とし、その向こうに『ほんもの』を感じてもらえるのがアニメーション」を持論とした。
多様なスタイルは、「同じことはしたくない」と新作の度に「実験」に挑んだ結果だ。自分のスタイルを崩さず深めていく宮崎駿監督とは対照的だった。
初監督映画「太陽の王子 ホルスの大冒険」で、服、生活道具、建物の構造まで緻密(ちみつ)に作り上げた。「実感」を求めるが故だ。それらの設定を考え描いたのは、東映動画入社3年目の宮崎さん。右腕として「ハイジ」「三千里」を一緒に作り、「世界をありありと作り上げる」高畑の手法を血肉とした。
代表作「火垂るの墓」は宮崎監督の「となりのトトロ」と2本立て公開だった。生活と生命の確かな実感の上に、対照的な花を咲かせた2作だった。(小原篤)
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