55歳まで低賃金の公務員や兵士に アフリカの国で義務
廃品で墓碑を作る少年。輸入品は高価なため、幼いころから技術を学ぶ。これも「自立」の実践だ=アスマラ、小森保良撮影
アフリカの小国、エリトリアの国民には「ナショナルサービス」と呼ばれる義務が課されている。事実上無期限で公務員や兵士として低賃金で働く。「自立した国家」の建設のためとされるが、国民は隷属を強いられているとの批判がつきまとう。これを嫌い国外に出る人も絶えない。(アスマラ〈エリトリア〉=小森保良)
首都アスマラの北東約50キロ、山あいを進むと「ガフテレイダム」が現れる。高さ42メートル、総貯水量5千万立方メートルの計画で、同国で最大級、初の本格的なコンクリートダム。来年に完成する予定だ。アフリカの発展途上国には珍しく、外国の技術や資金の支援を受けることなく、独力で工事が進められている。
「ダムは多くの経済的な恵みをもたらすが、それ以上のものをエリトリアに与える」。現場の技術監督ダニエル・マブラートさん(34)が力説した。現場の労働者は毎日1300人ほど。その多くがナショナルサービスだ。現場の責任者らは「ここはナショナルサービスによる『自立』の実践の場」と口をそろえる。
エリトリアはエチオピアとの30年に及ぶ闘争を経て1993年に独立を果たす。その間、ソ連などが肩入れしたエチオピアとは対照的に、外国の支援は限られた。ほぼ自力で独立を勝ち取ったことは人々の誇りだ。「自立」は建国後も国是となり、95年にそれを支える政策としてナショナルサービスが導入された。
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