絵本作家の加古里子さん死去 「からすのパンやさん」

 

写真・図版小学校卒業時の絵日記の原本(右)と、出版された本を手にする加古里子さん=2月28日、神奈川県藤沢市

 「からすのパンやさん」「だるまちゃんとてんぐちゃん」などの作品で知られる絵本作家で児童文化研究家の加古里子(かこ・さとし=本名中島哲〈なかじま・さとし〉)さんが2日、慢性腎不全のため死去した。92歳だった。葬儀は家族で行った。

1926年、福井県武生(現越前市)生まれ。東京大学工学部を卒業後、昭和電工に勤める傍ら、休日は困難を抱えた人々に寄り添うセツルメント活動に力を注いだ。戦災で荒廃した地域の子どもたちに見せていた自作の紙芝居福音館書店松居直さんの目に留まり、59年に絵本「だむのおじさんたち」でデビューした。

「かわ」「海」「地球」など子どもの好奇心を引き出す科学絵本も数多く手がけた。専門家に取材して最新の知見を盛り込みつつ、語りかけるような文章でつづり、挿絵や図版を駆使して段階を踏んで理解できるよう心を配った。ラオスやベトナム、オマーン、中国などで識字活動や障害児教育にも取り組んだ。紙芝居や一般書を含めた作品は700点を超す。

約29万点の資料をもとにまとめた「伝承遊び考」全4巻の完成などが評価され、08年に菊池寛賞を受賞。13年に「からすのパンやさん」の続編4冊、「どろぼうがっこう」の続編2冊、14年は「だるまちゃん」シリーズの新作や半生を語りおろした「未来のだるまちゃんへ」を出版するなど、最期まで盛んな創作意欲を見せた。

ASAHI.COM

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