iPS、心臓病への応用に一歩前進 難易度高く、課題も
iPS細胞からつくった心筋シートを重症心不全の患者に移植する研究が、厚生労働省の部会で了承された。ヒトのiPS細胞ができて10年。生死にかかわる心臓病への応用に向け、一歩を踏み出したことになる。期待も高まるが、難易度も高く、慎重な観察は欠かせない。
心筋シートは心臓のように自然に拍動し、移植後、数カ月間心臓にはりつく。血管をつくらせる物質などを出し、血流を改善させることで、患者の心臓の働きを助けることが期待されている。
心臓病は日本人の死因で、がんに次ぐ2位。重症心不全の患者は、国内に数万人いるとされる。いずれ心臓移植が必要になることも少なくない。提供数に限りがあるなかで、この治療により、心臓移植になる前の状態で食い止められれば、多くの患者を救う手段になる。
高齢化の影響もあり、国内に限らず世界中で心不全の患者が増えると懸念されている。原則として65歳以上の人は心臓移植の対象にはならず、重症化した際の治療手段がなく、高齢の患者にとっては福音になる可能性も秘める。
ただし、今回、患者に移植する細胞数は約1億個。理化学研究所が目の網膜で実施した約25万個に対し、3桁も多い。変化しきれなかったiPS細胞や、意図しない種類に変わってしまった細胞がまじれば、患者の体内で腫瘍(しゅよう)になりかねない。
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