高裁「DNA型鑑定、信用できぬ」 袴田さん釈放は継続

写真・図版東京高裁の決定をうけ、「不当決定」と掲げる弁護団の関係者=2018年6月11日午後1時35分、東京・霞が関、藤原伸雄撮影

1966年に静岡県清水市(現・静岡市)で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した元プロボクサーの袴田巌さん(82)=浜松市=について、東京高裁(大島隆明裁判長)は11日、再審請求を認めない決定をした。静岡地裁は2014年3月に再審開始を認める決定をしていたが、高裁はこれを取り消した。弁護側は高裁決定を不服として、最高裁に特別抗告する方針。

地裁決定は袴田さんの釈放も認めていた。高裁は「年齢や生活状況、健康状態などに照らすと、再審請求棄却の確定前に取り消すことは相当であるとまでは言い難い」として、死刑と拘置の執行停止は維持した。このため、最高裁の結論が出るまで袴田さんの釈放は続く見通しだ。

確定判決は、事件の1年2カ月後に現場近くの工場内のみそタンクから発見された、血痕がついた5点の衣類を「犯行時の着衣」と認定した。再審開始を認めた地裁決定は、衣類のうち、シャツの血痕から袴田さんとは異なるDNA型を検出したという本田克也・筑波大教授の鑑定結果の信用性を認め、「衣類は袴田さんのものでも、犯行時の着衣でもない」と判断。これを不服として即時抗告とした検察側は、本田教授の鑑定が「独自の手法で信用できない」と主張してきた。

これに対し、高裁決定は本田教授の鑑定方法などに疑問を呈し、「結果も信用できず、(無罪を言い渡すべき)明白性が認められる証拠とは言えない」と逆の判断をした。5点の衣類が犯行時の着衣という点に「不合理な点はない」とも述べ、「(袴田さんを)犯人と認定した確定判決の認定に合理的な疑いが生じていないことは明らかだ」と結論づけた。

死刑囚の再審請求が一度認められた後に取り消された例としては、61年に発生した名張毒ブドウ酒事件がある。この事件では2005年に名古屋高裁が再審を認めたが、翌年に同高裁の別の部が取り消した。再審請求をめぐる争いはその後も続き、事件を起こしたとして死刑が確定した奥西勝元死刑囚は15年に89歳で病死した。(小松隆次郎

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