実習生の死に首相「答えようがない」 危うい非情の中で
碑には弾圧を受けたうち17人の句が刻まれている。その一人、渡辺白泉(はくせん)は今月30日が没後50年の命日になる。白泉の名は知らなくても、この句は知っているという人は多いのではないか。
〈戦争が廊下の奥に立つてゐた〉
いつしか忍び寄ってきた戦争が、気づけば暗がりにぬっと立っている。戦慄(せんりつ)的な暗喩の句は、昭和の戦争のイメージを呼び覚まして不朽である。
もう一つ、応召して水兵になった横須賀海兵団時代の句も忘れがたい。
〈夏の海水兵ひとり紛失す〉
海に落ちるかして水兵が行方不明になったのだろう。それを「紛失」と表すことで、人がモノのように扱われる非情さを万の言葉にも増して暗示する。
去年の秋以降は、国会の審議にこの一句を思い出すことが多かった。
◇
外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法の改正は、粗雑と拙速をきわめる審議に終始した。新たな法には、自分がそうしろと言われたら耐えられないようなことを、他人(外国人)には求める冷ややかさが垣間見えている。
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