御巣鷹の父に会いに行く いまなら言える「ありがとう」
御巣鷹の尾根にある「昇魂之碑」で、線香を手向けて手を合わせる宮沢淳子さん(右)夫妻=2020年8月12日午前10時23分、群馬県上野村、林敏行撮影
日航ジャンボ機墜落事故から12日で35年。新型コロナウイルスは遺族の慰霊登山にも影を落とす。遺族の高齢化が進む中、感染リスクを考え参加を控えた人もいる。不安を感じつつも、少しでも大切な家族の近くにいたい、と登った遺族もいる。
コロナ禍でも「父に会える場所」へ
夫や飼い犬と訪れた横浜市の宮沢淳子さん(60)は、父の榊原勝さん(当時52)が眠る墓標にそっと手を合わせ、「久しぶりに会いに来たよ」と心の中で語りかけた。
一人娘で「怒られた記憶がないほど溺愛(できあい)してくれていた」という。取引先だった勤め先に用事を見つけては顔を出したり、急な頼みでも嫌な顔一つせず車で送り迎えしてくれたり。ただ事故当時の淳子さんは25歳。「何となく面倒くさい」存在だった父に「ありがとう」もろくに言えなかった。
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